アマティ
イタリアはクレモナのヴァイオリン制作者一族の名前だ。あるいは彼等が制作した楽器を指す場合もある。もっとも有名なのはニコロ・アマティだと思われる。アントニオ・ストラディバリウスの師匠にも当たる方である。
アマティ一族のヴァイオリンの一部は今も現役だ。ストラディバリやガルネリと並ぶ位置づけである。私のような素人には解りかねるが、制作者により特徴が違う上に、同一の制作者の楽器でも1挺1挺に個性が宿るという。一連の謎めいたエピソードを語るだけで一冊の本が書ける。つまり名器なのだ。
ブラームスの在世当時からこれらのイタリア製のヴァイオリンについての評価は高かったと見える。
ブラームスの伝記にあって、おそらくクララ・シューマンに次ぐ位置づけの女性に、アガーテ・フォン・ジーボルトがいる。大抵はト長調の弦楽六重奏とともに語られるが、ブラームスとは結ばれずに終わった。ゲッティンゲンの大学教授の娘であり、素人離れしたソプラノの歌い手だ。ブラームスの歌曲のうち作品番号14や19に霊感を与えたことが確実視されている。
ブラームスの親友にして当代きっての大ヴァイオリニスト・ヨアヒムは、彼女アガーテの美声を賞賛して、「アマティのE線」に喩えた。自らはストラディバリを所有しているのに、喩えにアマティを持ち出すとは意外だ。それでも単に「アマティのような」ではなく「アマティのE線」のようなというあたりが、一流のヴァイオリニストらしい。
超一流のコントラルトの歌手を嫁にもらったヨアヒムが絶賛するということは、つまりアガーテのソプラノの実力が、並大抵ではないということなのだ。
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