労働者の年収
ドイツ史の入門書をボチボチと読んでいる。
面白い記事を見かけた。1887年のライプチヒにおける下級労働者の年収データだ。これによると夫婦と11歳を筆頭とした3人の子供という5人家族で年収が1000マルクとされている。食糧への支出は何と60%強だ。つまりエンゲル係数が60%を超えるということだ。
2007年11月6日の記事「作曲の報酬」で当時の通貨マルクを現在の日本円に換算する基準を探し出した。1000マルク=50万円だ。
先のデータは正確にいうと「家計」とされているだけで一日なのか、月なのか年なのかは書いていない。けれどもこのデータは労働者の貧困を物語る記事の中で引用され、やがてそれが労働運動に繋がって行くという筋立ての中の一節だ。1日50万円なら結構な身分だし、月収50万円でも苦しいとまでは言えまい。これが苦しさのアピールなら年収に決まっている。家族5人で年間50万では、どうにもなるまい。一人でも苦しい。「1000マルク=50万」という換算基準を疑いたくなるほどだ。
一方先の記事「作曲の報酬」ではブラームスの交響曲には原稿料として15000マルクが支払われたと述べた。つまりそれは下級労働者の年収の15倍の金額に相当することになる。こちらは換算式を用いない当時のマルク同士の比較だからより信頼性が高い。交響曲1曲750万円といわれれば高いような安いような感じだが、下級労働者の年収の15倍と言われると凄いなと思う。ブラームスの交響曲の素晴らしさを思うとき妙に納得させられる数字である。
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