弾ける後輩
私は大学入学と同時にオーケストラに入団してヴィオラをゼロから習い始めた。無我夢中で練習して翌年1月にはブラームスの第2交響曲で演奏会に出た。それこそ学業を犠牲にヴィオラを練習してきたとはいえ、腕前はタカがしれている。
嬉しいオーケストラデビュウの3ヶ月後にはすぐ後輩たちが入団してきた。
幼少の頃から楽器を習っていたとまでは行かなくても、中学から習っていた奴と比べても違いは明らかだった。結果が冷酷に現れる体育会系のサークルではないのが救いだが、それでも内心穏やかではない。趣味のサークルとはいえ弾けるに越したことは無いのだ。団内での役割期待は年功序列的に膨らんで行くが、楽器の腕前はなかなかそうも行かない。幼少のころから楽器を習っていた奴に負けるのならともかく、初心者で始めた奴に抜かれるのは精神的に堪える。娘たちにはそういう目に遭って欲しくないから早いうちにヴァイオリンを始めさせたようなものだ。
ところが、中学に入って始めた次女のトロンボーン歴はまだ1年だ。つまりすぐ後ろに吹ける後輩が入って来る可能性は低くない。
私の場合は案の定「弾ける後輩」が大挙して入ってきた。それに加えて初心者で入団しながらあっという間に上達する奴も多かった。私の後ろの学年はそういう集団だった。彼らはやがて第50回定期演奏会の屋台骨を支えることになる。彼らの本質は楽器のテクだけではなく、その人間性だということに気付いたとき焦りはいつの間にか消えていた。私が4年になった頃だ。私はと申せばテクよりも仕切り癖で乗り切っていた。
学生のオケが個性をぶつけあう一瞬のキラメキだといういことが今になって身にしみている。
後輩たちを迎える次女のトロンボーンにブラームスのご加護を。
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