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2009年5月31日 (日)

五言絶句

漢詩の一形態。5文字4行で構成される。もしかすると中国最短の詩形だと思われる。高等学校で漢詩を習って以来、少し興味を持った時期があった。最初に覚えたのが杜甫。

「絶句」

   江は碧にして、鳥いよいよ白く 

   山青くして、花燃えんと欲す

   今春みすみす又過ぐ

   いつの日か之帰年ならん

春の情景。「花の色は赤だ」と先生から教わったことがやけに心に残っている。5月29日の記事「四色問題」を書いていて思い出した。杜甫のこの絶句も4色だ。「碧の川(江)」「白い鳥」「青い山」「赤い花」である。前半の叙景と後半の叙情が鮮やかである。短い詩形に4色を配した作品は、珍しいと思う。

杜甫の四色問題。

2009年5月30日 (土)

10大歌曲

今年1月からの歌曲特集の一環として、ブラームス「私的10大歌曲」の選定を決意した。こういうランキングを公開してしまうと、頭がそのように固定されてしまいがちだが、来年はまた違った結果になることも十分あり得る。本日ただ今の「10大歌曲」である点強調しておきたい。

君の青い瞳op59-4 実はこの作品の10位には相当悩んだ。明日は「森の静けさ」「ひばり」にとって変わられるかもしれない。

いかにおわすか我が女王op32-9 短調に転ずる第3節が悩ましくも美しい。リーズルの想い出のための曲だというが、そういうタイミングでこういうテキストに巡り会った幸運を思い遣りたい。

日曜日op47-3 華麗とは対極にある。素朴というにはチャーミング過ぎる。ブラームスの歌曲に始めて触れた思い出と共に不滅になっている。

夏の宵op85-1 甘美な夏の夜の描写。甘さだけなら「五月の夜」の上を行く。

夢に遊ぶ人op86-3 これがベスト10に入るところがらしいところではある。長短の境目をさまようという曲調。曲の流れを堰き止めたり煽ったり様々に表情を変えるシンコペーションが売り。

五月の夜op43-2 3年前に選んでいたらこの曲がダントツで第一位だったことは間違いのないところである。シャープ系に転調する中間部を挟んで回帰する瞬間の充足感は何にも代え難い。

おお死よ何と苦々しいことかop121-3 ブラームスの遺書かもしれぬ。普段から回数を聴いている訳ではない。mpで歌い出される粛々たる歩みは軽々しく聴かれることを拒否しているようだ。

永遠の愛op43-1 これが3位に出て来てしまったら、1位と2位はどうなるのか心配の向きも多いと思う。長らく第一位だった。今だってその価値は少しも揺らいでいない。リートの神髄に触れる気がしている。

あの娘の許へop48-1 むき出しのアウフタクトから深く掘り出されるような立ち上がりに打ちのめされている。民謡風などといって軽んずることなかれだ。単純な「ABAB」の二部形式だが、それがどうしたというのだ。

野のさびしさop86-2 最愛の歌曲。今はこれ。断然これ。見開き2ページの小品ながら、宇宙の広がりを表現して余すところがない。歌ってみたい気がするという点でも随一だ。欠点を強いて上げれば原題「Feldeinsamkeit」は曲の素晴らしさに比して、邦題に決定版が無いことだが、ブラームスに罪はない。この曲についてならいくらでも記事が書けそうだ。

本日開設から4周年に達するブログ「ブラームスの辞書」。その間記事が1日も途切れなかったことを自ら祝う記事である。

2009年5月29日 (金)

四色問題

「地図の塗り分けには4色あれば事足りる」ということは、19世紀の地図業者の間では経験的に知られていたらしい。やがてこれが数学の問題に置き換えられたが、なかなかの難問で、20世紀も後半になってコンピュータの力を借りて解決したという。インキの数はつまり版の数だから、地図屋にとってはコストである。早い話が死活問題だったのだ。

5月25日の記事「色彩索引」でブラームスの歌曲に登場する色をリスト化した。その過程で面白いことがわかった。同じ色が複数回登場しても1とカウントする限り、ブラームス歌曲において1つの作品に登場する色名は最大で4だ。5色が登場する作品は無い。4色の登場は下記の2作に限られる。

<夏の宵op85-1>

  1. grun Wiesen  緑の草原
  2. goldner Mond   黄金色の月
  3. blauen Himmel 青い空
  4. weiss Nacken 白いうなじ

最初の3つまでは夏の宵の情景描写だが、最後の白いうなじは、小川のほとりで水浴する妖精である。鮮やかなコントラストだ。さすがはハイネである。

<野のさびしさop86-2>

  1. grunen Grass 緑の草
  2. blaue Himmel  青い空
  3. weissen Wolken  白い雲
  4. tiefeblau Raume  群青の空

これも最初の3つは情景の描写。アルマースのテキストだ。緑の草に囲まれて青い空と白い雲を仰ぎ見る作者がいる。最後のRaumeは、行きがかり上「空」という訳語を当てているが実質的に「宇宙」に近い。筆者の魂がこの世を去って渡り行く先の描写だ。ブラームスの絶妙の和音使いとも相俟って有無を言わせぬ説得力を醸しだす。まさに世界遺産級だ。

ところが民謡になると話が変わる。「ばら色のくちびるWoO33-25」には5色が現われる。

  1. rosen Mund ばら色のくちびる
  2. schwarzbraun Magdelein 褐色の髪
  3. morgenrot Wangen 朝焼け色の頬
  4. schwarz Augen 黒い瞳
  5. blau Himmel 青い空

申すまでもない。恋人の美しさを男の側から歌ったテキストだ。Magdeleinは直訳すると乙女だが、彼女の髪の色の描写だ。その結果「くちびる」「髪」「ほほ」「瞳」最初の4つ全てが恋人のパーツだ。これらそれぞれに象徴的な色をあてることで、鮮やかな色彩感を獲得している。民謡だからもちろん作詞者不詳だが、ハイネやアルマースに勝るとも劣らない絶妙の色彩感覚。「朝焼け色」(morgenrot)には降参である。

ブラームスの四色問題。

2009年5月28日 (木)

あてはずれ

5月27日の記事「青は長調」で、テキストに現れる色名と作品の調性の関係について述べた。「青」「金」について「長調優勢」が仄かに認められるという希望的観測をこめた無理目の仮説だ。我ながら相当無理目だ。色名索引を作成した勢いで行きがかり上話題にしたが、このノリは嫌いでないから始末が悪い。

当然の流れとしてせっかく作成した「動植物索引」で同じ事を試した。特定の動植物名が特定の調性を伴っていないかである。

結果から申せば、色名以上にバラバラだった。「ナイチンゲール」がもしかすると長調かもしれいない程度だ。

古来調性については色彩との関連を云々する論者もいた。特定の調と色の関係が取りざたされることもある。何より「音色」という言葉の存在は大きい。ラヴェルなどのオーケストレーションを色彩感溢れると評する向きもある。音楽と色を関連付けるのは、あながち無理な話ではないのだ。手法や切り口の整理次第で面白くなると思う。

しかし動植物は難易度が高い。調だけでなく、拍子やリズムとの相関も調べたい。テキストの中でのそれら動植物の位置づけにもよる。動植物が描写の対象なのか、背景を飾るツール過ぎないのかで音楽への影響も変わるだろう。作品冒頭の調だけではダメで、その動植物名が歌われる瞬間が大切なことは、色彩以上だ。

この程度のラフな探査で、天晴れな相関関係が見つかってしまうほど底の浅い話ではあるまい。それでもタダでは起きない私は、記事を一本こうしてデッチ上げたというわけだ。

2009年5月27日 (水)

青は長調

だめで元々で調べてはみたが、やっぱりダメだった。

色彩索引で作った色名リストに作品の調性を当てはめてみた。テキストに現れる色名が、作品の調性選択に影響していやせんかという無理目の仮説を検証するためだ。

本当はテキスト中の色名が歌われる瞬間の調性を個別に調査集計するべきだが、調の決定が出来ないことも多く諦めて、作品冒頭の調で調べた。

やはりこの方法では顕著な傾向は現れにくいようだ。予想は出来たががっかりだ。

けれども、「青」と「金」にはうっすらと長調優勢の傾向があるようにも見える。「赤」「緑」「白」は完全に長短が拮抗するが、「青」「金」だけは長調が多い。その他の色は事例が少なくて傾向を読むことが難しい。

つきつめてやると面白そうな予感がする。

2009年5月26日 (火)

色をつける相手

昨日の記事「色彩索引」でブラームス歌曲に現われる色名のリスト化を試みた。実はささやかな工夫があった。色名の羅列列挙は既にずっと前に完成していたが、記事にするにあたって今ひとつ物足りなかった。

何が足りないか自問する中から浮かんだのが、色をつける相手だ。「白」といった場合それが「雲」なのか「雪」なのか「鳥」なのかでイメージが全然違う。動植物の場合は、名前の列挙だけで楽しめたが、色の場合は「白が多い」「黄色が少ない」だけでは面白くない。そこで、もう一度テキストをあたって、色名が何を修飾しているのかを調べなおした。

昨日の記事にはそれが反映している。

その結果、各々の色が、それぞれどんなものを修飾しているのかについて以下のような傾向を割り出すことが出来た。

<赤>恋人の唇か、バラが2本柱だ。

<青>空、水面、瞳、花などバラエティに富む。特定の語への集中がない。

<緑>草木、森、大地、野など。植物の群生の結果としての緑が圧倒的多数を占める。

<白>胸、顔、首、腕など露出する女性の肌が多い。女性とはもちろん男の側から見た恋人である。他に鳥と雲が少々だ。

<金>主に太陽光線とその反射だが、割と多岐にわたる。

上記5色以外は数が多くないから傾向を割り出すのが難しい。黄色が少ないのが意外だった。

とても面白かった。

2009年5月25日 (月)

色彩索引

通算20万アクセスに絡んで露呈した信心不足について、再発防止の決意表明としてカテゴリー「75 図鑑」を立ち上げた。既にブラームス歌曲に登場する動植物リストを掲載しブラームス神社に奉納した。

本日はブラームス歌曲に登場する色についてリスト化を試みる。作品名の後ろに、その色名が修飾する言葉を緑文字で付記した。たとえば「あこがれ」op14-8に出現する「blau」は「See(湖)」を修飾している。

<青>blaublaueblauenblauer

  1. 「あこがれ」op14-8 See
  2. 「すみれ」op49-2 Kelceh 杯 2箇所 
  3. 「湖上で」op59-2 Himmel
  4. 「湖上で」op59-2 Wogen
  5. 「君の青い瞳」 Auge 瞳 2箇所
  6. 「鼓手の歌」op69-5 修飾先難解
  7. 「夏の宵」op85-1 Himmel
  8. 「野の寂しさ」op86-2 Himmel
  9. 「猟師」op95-4 Auge
  10. 「天に向かって歎きたい」WoO33-44 Blumelein 花 2箇所
  11. 「密やかに月は上りて」WoO33-49 Blumelein 花 3箇所
  12. 「密やかに月は上りて」WoO33-49 Luft

<青白>bleich

  1. 「まどろみはいよいよ浅く」op105-2 ich

<青灰色>blaugrau

  1. 「鼓手の歌」op69-5 修飾先難解

<赤>rotroterotenroterrotesrotlich

  1. 「異郷で」op6-3 Blitzen 稲妻
  2. 「傷ついた少年について」op14-2 Blut
  3. 「このくちびるの震えて求めるは」op33-7 Mund
  4. 「おお愛らしい頬よ」op47-4 Fleisse 肉体
  5. 「秋思」op48-7 Blatt
  6. 「恋歌」op71-5 Blumen
  7. 「少女の歌」op85-3 Roslein バラ
  8. 「早まった誓い」op95-5 Wein ワイン
  9. 「3つのバラが」op103-6 Roslein バラ
  10. 「真っ赤な夕焼け雲が」op103-8 Abendwolken 夕焼け雲 2箇所
  11. ワルツ「愛の歌」op52-4 Abends 夕映え
  12. 二重唱曲「エドワード」op75-1 Blut 血 4箇所
  13. 二重唱曲op112-4 Blut
  14. 二重唱曲op112-4 Rosen バラ
  15. 二重唱曲op112-4 Wangen ほほ
  16. 二重唱曲op112-4 Vogel
  17. 「野ばら」WoO31-6 Roslein バラ 3箇所
  18. 「私の心は優しく寄り添う」WoO33-3 Ruein ルビー
  19. 「私の心は優しく寄り添う」WoO33-3 Mund
  20. 「娘さんごいっしょに」WoO33-11 Roslein バラ 
  21. 「目覚めよ美しき恋人よ」WoO33-16 Mund
  22. 「3つのバラが」WoO33-43 Roslein バラ 

<朝焼け色>Morgenrot

  1. 「五月の夜」op43-2 Bild 光景
  2. 「ばら色のくちびる」WoO33-25 Wangen

<黄色>gelb

  1. 「悲しくさまよい歩く」op32-3 Blatter
  2. 「秋思」op48-7 Blatt

<金>goldgoldnegoldenengoldengoldner

  1. 「春」op6-2 Licht
  2. 「このくちびるの震えて求めるは」op33-7 Haar
  3. 「木陰に憩えいとしい君よ」op33-9 Bienelein みつばち
  4. 「あなたどこでためらっているの」op33-13 Schein 輝き
  5. 「何と楽しく爽やかに」op33-14 Flut 海原
  6. 「花輪]op46-1 Pracht 輝き
  7. 「黄金が愛情にまさる」op48-4 Sterlein
  8. 「夕立」op70-4 Strahl
  9. 「くもの糸」op72-2 Liebstraume 愛の夢
  10. 「夏の宵」op85-1 Mond
  11. 「君に捧げたものは美しかった」op95-7 Geschmeide 飾り
  12. 「二人はそぞろ歩いた」op96-2 Gloccken
  13. 「船の上で」op97-2 Glut 輝き
  14. 「私の知っている娘は」WoO33-40 Haar
  15. 「3つのバラが」WoO33-43 Krausgekrollt 巻き毛
  16. 「からかいあい」op31-2 Fisch

<銀>silbersilberne

  1. 「五月の夜」op43-1 Mond
  2. 「忘却の水をたたえた杯」op46-3 Schlummwequell まどろみ
  3. 「月に寄す」op71-2 Mond
  4. 「霜が置いて」op106-3 Licht
  5. 「ひそやかに月は上りて」WoO33-49 Wolken

<くるみ色>nassbraun

  1. 二重唱「姉妹」op61-1 Haar

<黒>schwarzschwarzen

  1. 「鍛冶屋」op19-4 Kamin 煙突
  2. 「ばら色のくちびる」WoO33-25 Augen

<こげ茶>schwarzbraun

  1. 「騎士」WoO33-23 Augen
  2. 「ばら色のくちびる」WoO33-25 Magdelein 乙女、事実上髪か?3箇所

<紺>tiefeblau

  1. 「野のさびしさ」op86-2 Raume 宇宙

<白>weissweisseweissenweissemschneeweiss

  1. 「愛と春1」op3-2 Winden 昼顔
  2. 「リート」op3-4 Flukiege 羽根
  3. 「涙の谷へ角笛を吹く」op43-3 Brust
  4. 「領主フォン・ファルケンシュタインの歌」op43-4 Kleide
  5. 「忘却の水をたたえた杯」op46-3 Brust
  6. 「おお愛らしい頬よ」op47-4 Fleisse 肉体
  7. 「少女の罵り」op69-9 Hals
  8. 「少女の罵り」op69-9 Brust
  9. 「少女の罵り」op69-9 Arme
  10. 「僕が行くことを君は望むの」op71-4 Flegeln
  11. 「夏の宵」op85-1 Nacken
  12. 「野のさびしさ」op86-2 Wolken
  13. 「少女」op95-1 Antlitz 面 2箇所
  14. 「からかいあい」WoO31-2 Taubchen
  15. 二重唱「自然の現象」op61-3 Bogen アーチ
  16. 二重唱「気をつけるのだ」op66-5 Brustlein
  17. 「娘とはしばみ」WoO31-11 Brot パン
  18. 「私の知っている娘は」WoO33-40 Brustlein
  19. 「白い小鳥が」WoO33-45 Voglein 鳥 2箇所

<茶>braunbraune

  1. 「スペインの歌」op61-1 Wange
  2. 「騎士」WoO33-23 Magdelein 乙女
  3. 「褐色の髪の乙女」WoO33-24 Maidelein 乙女
  4. 「殿様と家来が馬に乗って」WoO33-28 Schild
  5. 「私の知っている娘は」WoO33-40 Augelein

<灰色>grau、graune

  1. 「調べのように」op105-1 Nebe l
  2. 四重唱「晩秋」op92-2 Nebel

<ばら色>rosen

  1. 「ばら色のくちびる」WoO33-25 Mund くちびる

<緑>Grun,Grune,Gruner

  1. 「愛と春2」op3-2 Matten 牧場
  2. 「リート」op3-4 Wald
  3. 「リート」op3-4 Erde 大地
  4. 「誓い」op7-2 Heide
  5. 「エーオルスのハープに寄せて」op19-5 Hugel
  6. 「いかにおわすか我が女王」op32-9 Schatten 木陰
  7. 「これは悲しみなのか喜びなのか」op33-3 Flur
  8. 「心変わりした男」op48-2 Rasen
  9. 「心変わりした男」op48-2 Hut 帽子
  10. 「名残り」op59-4 Grass
  11. 「名残り」op59-4 Rasen
  12. 「春の慰め」op63-1 Blatter
  13. 「想い出」op63-2 Haine
  14. 「鳩に寄せて」op63-4 Fluss
  15. 「我が恋は緑」op63-5 Liebe 恋 2箇所
  16. 「歎き2」op69-2 Hain
  17. 「海辺から」op69-6 Kristal 水晶
  18. 「恋歌」op71-5 Wassen
  19. 「夏の宵」op85-1 Wiesen 草原
  20. 「野のさびしさ」op86-2 Grass
  21. 「少女」op95-1 Bergen
  22. 「少女」op95-1 Gareten
  23. 「猟師」op95-4 kleid
  24. 「船の上で」op97-2 Flut
  25. 「裏切り」op105-5 Linde 菩提樹
  26. 「裏切り」op105-5 Rasen 草原
  27. 二重唱「愛の使い」op61-4 Bergen
  28. 二重唱「ともに度に出よう」op75-3 Baume
  29. 二重唱「ああ美しい夜」op92-1 Halm
  30. 「娘とはしばみ」WoO31-11 Hassel はしばみ 3箇所
  31. 「天使のような羊飼い」WoO33-8 hutte 小屋
  32. 「別れはつらい」WoO33-17 Klee クローバー
  33. 「騎士」WoO33-23 Grass
  34. 「3つのバラが」WoO33-43 Gras
  35. 「白い小鳥が」WoO33-45 Heiden 牧場 6箇所

2009年5月24日 (日)

きみの青い瞳

「Dein blaues Auge」作品59-8のこと。全長29小節でテキストはクラウス・グロート。我が家の14種の演奏の最短で1分51秒、最長で2分29秒、見開き2ページの小品に過ぎないが無視できない。4分の4拍子「Ziemlich langsam」の変ホ長調は同じ調性の「五月の夜」を髣髴とさせる。前奏と後奏が各4小節あるから歌われるのは21小節にとどまるが、内容は甘くて濃い。

その前奏と後奏は、左手が少しだけ変化しているものの全く同じ旋律だ。振幅の大きいこの旋律こそが本作品の主体となっているというのに歌手によって歌われることはない。ピアニストの腕の見せ所なのだ。あっと驚く「f」を伴って立ち上がった旋律はEs→Esdim7→B7→Esという具合に小節毎に移ろって行く。この進行には何とも堪えられない味がある。特に2小節目の減7和音に変わる瞬間の揺らぎは本作の肝とも思われる。左手のG音にフラットが忍び寄ってGesに行く様子は、第三交響曲冒頭のA→Asを思わせるが、こちらの方がぐっと繊細に映る。

歌が出始めるとピアノはすっと後ろに下がってしまうが、ブラームスならではの繊細な和声を縁取って行く。ハッとさせるような半音の衝突あり、言われてみればその通りのダブルフラット有りだ。

とっておきの場所がある。21小節目2拍目裏。時間にして8分音符1個分だ。ピアノ右手上でGesとFの衝突が起きる。この半音衝突の可憐さは並ではない。

やがて25小節目で歌が終わると同時にイントロがキッチリと回帰する。「ハイ戻って来ましたよ」とばかりに捺印するかのような「rf」(リンフォルツァンド)が、冒頭の「f」になり代わって鎮座している。この「rf」だけは「その音を特に強く」と解しては違和感が大き過ぎる。

楽譜のある人は是非見て欲しい私の宝物だ。

2009年5月23日 (土)

ヴィオラによる歌曲

ブラームスのヴィオラソナタのCDは油断が出来ない。彼のソナタとしては最小だから、1番2番を収録したところで、CDの収録キャパには余裕が生じる。この余白がいたずら心をくすぐるらしい。サービス精神を発揮する演奏家が少なくないのだ。

エトーラ・カウサ(Va)、マルク・パンティヨン(pf)のコンビでヴィオラソナタのCDが出ていた。もちろん2曲のヴィオラソナタがキッチリ収まっているのだが、それに先立ってブラームスの歌曲が下記の通り、ピアノとヴィオラで演奏されているのだ。余白に入れているという感じがしない。

  1. 調べののように op105-1
  2. まどろみはいよいよ浅く op105-2
  3. 落胆 op72-4
  4. 野の寂しさ op86-2
  5. 航海 op96-4
  6. 私は顔を向けてみた op121-2

特に「野の寂しさ」はヴィオラで弾かれると深い味わいがある。

2009年5月22日 (金)

弾き語り

楽器を弾きながら歌うこと。自らの歌の伴奏を自分で行うとも言い換えられる。弾き手自らが歌い手であることに加えて、ソロであることも必須条件であるような気がする。オフィシャルな定義があるのかどうか自信がない。

人間の体の構造上、管楽器での弾き語りは考えにくい。だから弾き語りなのである。そういえば吹き語りという言い回しにはお目にかからない。

自唱、自伴奏、ソロの他にも条件がある感じている。演奏される曲のテンポだ。あまりテンポが速い曲は無いような気がしている。あるいは、言葉をクルクルと回すような歌は少ないとも思われる。

イメージとしては、切々とあるいは淡々と訴えかけるような曲調がふさわしい。

クララ・シューマンの没した後、ブラームスは親しい知人とクララの思い出に浸って過ごした。思い出に浸るとは、つまりクララの愛した音楽作品を仲間内で演奏することだった。

ブラームスの出番になった。選んだのは「4つの厳粛な歌」だ。ピアノを弾きながらブラームス自身が歌ったらしい。涙を流しながらの弾き語りだった。居合わせた者全てに深い印象を与えたという。

何という弾き語りだろう。クララの死を惜しむという状況、「4つの厳粛な歌」という選曲、自作自演という形態、どれをとっても空前絶後だろう。もちろんブラームスは声楽の専門家ではない。けれども凄い演奏だったことは容易に想像できる。4曲全て歌ったのだろうとは思うが、3番「おお死よなんと苦しいことか」が一番似合うような気がする。

2009年5月21日 (木)

1500本目の記事

本日のこの記事が、ブログ「ブラームスの辞書」の1500本目の記事である。2005年5月30日のブログ開設から1453日目である。4年弱だ。クララ・シューマンの命日と重ならないところが、なかなかシャープである。

この系統の記念日は必ずやってくる。おまけに記念日が予測可能だ。毎日1本の記事公開を自主ルールとする以上、10000本目の年月日も予測が出来る。一方アクセス数に関する記念日は、アクセスの量次第で到達に要する日数が伸び縮みする。それがやりがいに繋がる代わりに怖さもある。

今日のような記事の本数にかかる記念日は自分次第である。そしてそして、実はアクセスには記事の本数との間に緩やかながら確実な相関関係があると感じている。毎日着実に記事を公開することは、アクセスアップのもっとも基本的な手段だと思う。

もうひとつ忘れてはならないことがある。

ブログ「ブラームスの辞書」の記事執筆についての自主基準だ。「濃い目のブラームスネタ」を出来るだけ揃えるといつも心に言い聞かせている。一見難儀な制約のようだが、何とこれが長続きの秘訣になっていると思う。ネタの発掘のためにいつも心のアンテナを磨いて高く掲げていることで、プラスの効果が期待できるのだ。クララやバッハに言及することはとても多いのだけれど、ブラームスとの接点だけはけして見失わぬよう気を配る。クララネタやバッハネタは今やブログ「ブラームスの辞書」の2枚看板だ。

「日常感じた徒然を筆の赴くままに」というコンセプトだったら、相当苦しいと思う。記事をブラームスネタに限ることなど制約ではあり得ない。

私にとってブラームスが好きとはこういうことなのだ。

2009年5月20日 (水)

遥かなる恋人に

ベートーヴェンの歌曲の話題。

歌曲集「遥かなる恋人へ」op98が名高い。全6曲からなるこの歌曲集は、ロベルト・シューマンも愛していた。特にその第6曲「受けたまえこの歌を」を愛好し、クララのために何回か引用している。とくに弦楽四重奏曲第2番第4楽章が名高い。

シューマン邸を訪問して間もなくブラームスはピアノ三重奏曲第1番ロ長調を完成させる。現在では「初版」と付言することも忘れてはなるまい。なぜなら1890年になって本人の手によって改訂が施されているからだ。この改訂の際に第4楽章チェロによる芳醇な第2主題が、ごっそりと削除の憂き目にあった。初版第4楽章104小節目以降のフレーズだ。

実はこの旋律がベートーヴェンの「遥かなる恋人に」の第6曲「受けたまえこの歌を」からの引用だと指摘されている。シューマン夫妻と親しくなったブラームスが、その直後の室内楽に、シューマン夫妻ゆかりの旋律を取り入れたと解されている。

その由緒ある旋律を1890年の改訂に際して、何故根こそぎ抜き取ったかという疑問が生じる。ブラームスの作品は、他作曲家との類似を古来あまた指摘されてきた。けれどもブラームスは、それに対し沈黙を貫いている。作品に改訂を施すこともしていない。

この作品だけ何故という疑問を払拭できないでいる。

今日はクララ・シューマンの命日だ。

2009年5月19日 (火)

自分に贈る

間もなくブログ「ブラームスの辞書」は、開設以来の記事が1500本に達する。これを言い訳にして、大きな買い物をしてしまった。

電子辞書だ。

既に我が家では長男と長女が持っている。長男の英国研修の時に買い与えたのが最初だった。子供らは書籍としての辞書を引こうとしないが、電子辞書はいつも手許において遊び感覚で使っている。それを横目で見ていて、「こりゃ捨てたモンでもないわい」と感じていた。

ブログ「ブラームスの辞書」では昨秋の「地名」や今年に入ってからの「歌曲」でドイツ語に浸る機会が増えた。ましてやドイツ語オンリーの大著マッコークルを理解しようと思えば辞書は手放せない。小さい文字が難儀にもなって来ている。ドイツ語を電子辞書でと考えるのはむしろ自然なことだ。

問題は価格だ。次女に買ってやったヴァイオリンセットに比べれば10分の1だが、「ブラームスの辞書」に比べれば10倍だ。記事が1500に届くお祝いと、定額給付金を若干の追い風にして買い求めた。「清水の舞台から飛び降りる」感じで思い切った。ドイツ語ではどう言い回すのだろう。「バイロイトの舞台から飛び降りる」とでも言うのだろうか。

1週間使ってみた。独和で初めて引いた言葉はもちろん「Brahms」だ。ちゃんと載っていた。最高。辞書を片手にちまちまよりも数段効率がいい。飛び降りた甲斐があった。

歌曲のテキストにはどうも詩的な言い回しが多く、中辞典程度では載っていないことも頻繁に起きる。独和16万語、和独6万語。独独25万語の威力は絶大だ。そして目立たぬが、独英や英独辞典が充実しているのもじんわりとありがたい。電子辞書を使いこなすことによって、記事を思いつくことにも貢献しそうだ。

2009年5月18日 (月)

植物索引

5月10日の記事「愛鳥週間」でブラームスの歌曲に出現する鳥の名前をリスト化した。さらに5月12日の記事「動物索引」で、鳥以外の動物について同様のリスト化をする中から、鳥の位置付けを浮き彫りにし、ナイチンゲールの最多出場を確認した。

古来日本人は四季折々に自然を愛でてきた。「花鳥風月」という言葉に象徴されている。鳥を含む動物のリスト化を成し遂げた今、「花」を含む「植物」に触手を伸ばさぬとしたら、それは日本人としてははなはだ不自然だというわけで「花」の最多出場が「バラ」であることを突き止めた。「バラが最多である」と言い切る以上他の花も調べていることに他ならない。せっかく調べたので、本日はそれも公開する。

ブラームス歌曲に登場する植物をリスト化した。「Baum木」「Blume花」「Gras草」などは省略する。案の定な話だが「竹」は出現しない。

昨日カテゴリー「75 図鑑」を立ち上げたから、ご祝儀代わりの記事である。マッコークルも唖然のヒマの厚み。

  1. Apfel りんご 「小夜鳥に」op46-4
  2. Beeren いちご 「いちご畑で」op84-3に2箇所
  3. Brennessel イラクサ 二重唱op112-5
  4. Dannabaum 樅の木 「ナイチンゲール」WoO31-2 2箇所
  5. Dornen イバラ 「イバラ姫」WoO31-1に2箇所、「雪のように白い小鳥が」WoO33-45に2箇所
  6. Flieder ライラック 「わが恋は緑」op63-5、「あそこの牧場に」op97-4、「草原の家」WoO33-31
  7. Hassel はしばみ 「ナイチンゲール」WoO31-2、「膝の上のお馬乗り」WoO31-8、「娘とはしばみ」WoO31-11に3箇所
  8. Holunder にわとこ 「にわとこの木のあたりを」op63-6に3箇所
  9. Jasmin ジャスミン 「にわとこの木のあたりを」op63-6、「古い恋」op72-1
  10. Katzenscwantz キャッツテール?「膝の上のお馬乗り」WoO31-8
  11. Kirch さくらんぼ 「悲しむ娘」op7-1
  12. Klee クローバー 「別れはつらい」WoO33-17
  13. Kraut キャベツ 「別れはつらい」WoO33-17
  14. Lilien ゆり 「殿様と家来が馬に乗って」WoO33-28
  15. Linde 菩提樹 「1本の菩提樹が」WoO33-41に2箇所、「名残り」op6-3、「アグネス」op59-5、「裏切り」op105-5、「霜が置いて」op106-3
  16. Lorbeer 月桂樹 「それを悔いた者はまだいない」op33-1
  17. Maienblume すずらん 「恋歌」op71-5 
  18. Maienkatzen ねこやなぎ 「ねこなやぎ」op107-4に3箇所
  19. Naglein なでしこ 「子守唄」op49-4
  20. Narzisse スイセン 「春の慰め」op63-1
  21. Reben ブドウ 「愛の春1」op3-2
  22. Rose バラ 詳細はこちら
  23. Veil すみれ 「別れはつらい」WoO33-17
  24. Veilchen すみれ 「すみれ」op49-2に2箇所
  25. Violen すみれ 「おお来たれ心地よい夏の午後よ」op58-4
  26. Weiden  「永遠の愛について」op43-1、「夕靄は垂れ込めて」op59-1、「僕が行くことを君は望むの」op71-4
  27. Weizen 小麦 「恋人の誓い」op69-4
  28. Winden 昼顔 「愛の春1」op3-2
  29. Zypresse 糸杉 「わが歌」op106-4

改めてバラの優位を確認いただきたい。

2009年5月17日 (日)

図鑑

5月7日のブラームスの誕生日までに20万アクセスに到達しなかったことについて「信心が足りない」と位置付けた。神社だからいいものの、会社だったら善後策、再発防止策の一つも考えさせられるところである。

5月10日からの愛鳥週間にちなんでブラームス歌曲に登場する鳥のリスト化を試みた。その後1週間に同様の記事を連発した。つまり信心不足克服を目指す気合ネタである。おかげさまで「鳥」「動物」「バラ」のリストが出来た。使い勝手に考慮してそれらを集約する目的でカテゴリー「75 図鑑」を新設する。地名ネタ以外の過去のリスト系記事も順次取り込んで行くこととする。

新カテゴリー「75 図鑑」をブラームス神社に奉納し、歌曲特集の総仕上げに望む決意表明に替えたい。

2009年5月16日 (土)

もう一つのナイチンゲール

5月10日の記事「愛鳥週間」で、ブラームスの歌曲に出現する鳥のリストを作り、ナイチンゲールつまり小夜鳥が、最多登場だと書いた。鳴き声の美しい鳥として認知されているようだ。

さて、ブラームスは弦楽五重奏曲第2番の完成後、創作力の衰えを自覚し、作曲を控える決断をした。ところが、この決意はあるクラリネット奏者との出会いによって撤回される。

彼の名はリヒャルト・ミュールフェルトだ。独学でクラリネットを学んだらしいが、その表現力は素晴らしく、ブラームスはたちまち虜になった。

ブラームスはミュールフェルトを指して「私のナイチンゲール」と呼んだのだ。歌曲最多出場のナイチンゲールの売りは、その美しい鳴き声だ。ミュールフェルトの操るクラリネットがそれにあやかるほどの音色だったということに他ならない。

その考えに同調する人はきっと多かったのだと思う。ヨアヒム四重奏団は、結成以来はじめてクラリネットとの競演に踏み切った。それは、ミュールフェルトを加えて、ブラームスの新作クラリネット五重奏曲を演奏するためだった。

愛鳥週間今日まで

2009年5月15日 (金)

バラ

5月10日の記事「愛鳥週間」で、ブラームス歌曲に現われる鳥をリスト化し、ナイチンゲールが最多であると書いた。鳥のナンバー1がわかれば「花は?」となるのが、日本人というものだ。調べた結果それは「バラ」であった。

<Rose>

  1. 「悲しむ娘」op7-4 
  2. 二重唱op112-3 3箇所
  3. 二重唱op112-4 

<Rosen>

  1. 「愛と春1」op3-2
  2. 「愛と春2」op3-3
  3. 「わが女王」op32-9
  4. 「それを悔いた者はまだいない」op33-1 2箇所
  5. 「心変わりした男」op48-2 2箇所
  6. 「子守唄」op49-4
  7. 「花輪」op84-2
  8. 「サッフォー頌歌」op94-4
  9. 「少女」op95-1
  10. 二重唱op112-4 2箇所
  11. 「娘とはしばみ」WoO31-11
  12. 「美しい娘さん、許しておくれ」WoO33-2
  13. 「ばら色のくちびる」WoO33-25
  14. 「3つのバラ」WoO33-43 7箇所
  15. 「ひそやかに月は上りて」 WoO33-49 4箇所

<Roslein>

  1. 「少女の歌」op65-3
  2. 「1列に並んだ3つのバラが」op103-6
  3. 「野ばら」WoO31-6 20箇所
  4. 「娘さんいっしょに行こうか」WoO33-11

何にせよ圧倒的だ。2位は10箇所にも満たない。華やかなイメージはしばしば恋人の象徴でもある。

もちろんマッコークルにもバラ索引は存在しない。

2009年5月14日 (木)

Lerchengesang

「れるひぇんげざんく」と発音する。「ひばりの歌」あるいは「ひばりのさえずり」と訳される歌曲。作品70-2は、創作の中期にひっそりと置かれた宝物だ。ただただ可憐である。

2分の2拍子ロ長調。小節後半の2分音符が、付点4分音符と8分音符に割られ、さらにその直前に8分音符が加わった状態。つまり付点4分音符が8分音符で挟まれた形だ。この音型がひばりのさえずりの模倣であることは古来指摘されている通りなのだが、この曲に限って申せば、その音符そのものが、楽譜上で遊ぶ小鳥のように見えてしまう。音の高さを変えながら全部で21回現われる。しかもその全てが歌手のパートが休符の時だ。律儀なことに歌手の側にはこの音形は一度も現われない。2分音符を3つに割った三連符ばかりである。この2系統のリズムのせめぎ合いを味わう音楽と申しては屁理屈が過ぎるだろう。

第1交響曲と第2交響曲の間に挟まれた作品番号69から72は、全て歌曲になっている。山脈のように屹立する2つの交響曲を作曲する一方でブラームスは、23曲もこの手の可憐な歌曲を生み出していた。

1番と2番の2つの交響曲の谷間で、ひっそりとさえずるひばりである。

2009年5月13日 (水)

ネコ不在

5月10日の記事「愛鳥週間」と12日の記事「動物索引」で、ブラームスの歌曲に登場する動物たちをリストアップした。

例によってしょうもない疑問がある。

ネコがいないのだ。ネコといえばペット大国現代日本において犬と人気を二分する存在だ。その片方の犬はまずまず登場するのに対し、ネコは姿を見せない。

「MaienKatzchen」op107-4は「ねこやなぎ」でネコそのものではないし、「膝の上のお馬乗り」WoO31-8に登場する「Katzenschwanz」は直訳すれば「ネコの尾」だが、どうも植物の名前らしい。「サロメ」op69-8に登場する「Luchs」は「大山猫」と訳されているが、いわゆる「家ネコ」ではなさそうだ。

なぜだろう。

鳥を除いた動物で最もよく現われるのは「犬」「ウマ」だ。使われ方を見ていると「ウマ」は騎乗の対象だし、「犬」は羊飼いのお供か番犬だ。つまりどちらも実用動物だ。この点でどうもネコは分が悪いのかもしれない。

困った。よく見ると牛もいない。

2009年5月12日 (火)

動物索引

5月10日の記事「愛鳥週間」で、ブラームス独唱歌曲のテキストに現われる鳥たちをリスト化した。単に「鳥」を意味する「Vogel」を入れれば作品番号付きの歌曲とWoO31とWoO33のドイツ民謡集の中で101回現われた。これがどれだけの意味を持つか説明するために、本日は鳥以外の動物について同じ事を調べてみた。つまり動物名索引である。もちろんマッコークルには載っていない。毎度毎度ウムラウトは赤文字で表す。

  1. Bienelein ミツバチ 「名残り」op6-3、「木陰に憩えいとしい君よ」op33-9
  2. Falter  「にわとこの木のあたりで」op63-6
  3. Fischlein 小魚 「リート」op3-4
  4. Fliege ハエ 「いばら姫」WoO31-1に2箇所。
  5. Gluhwurmchen ホタ 「あそこの牧場に」op97-4
  6. Grille こおろぎ 「夏の宵」op85-1、「野のさびしさ」op86-2
  7. Hase うさぎ 「涙の谷へ角笛を吹く」op43-3
  8. Hund  「いばら姫」WoO31-1に2箇所。「森の狩人」WoO31-9。「どうしたら開けてくれるの」WoO33-34。
  9. Hundelein  「森の狩人」WoO31-9に2箇所。「子守唄」WoO31-10に2箇所。
  10. Hunden  「涙の谷へ角笛を吹く」op43-3に2箇所。
  11. Luchs 大山猫 「サロメ」op69-8。
  12. Marienwurmchen テントウ虫 「テントウ虫」WoO31-13に5箇所。
  13. Pferd ウマ 「誘拐」op97-3、「膝の上のお馬乗り」WoO31-8。
  14. Ross ウマ 「それを悔いた者はまだいない」op33-1、「歎き1」op69-1、「いばら姫」WoO31-1、「殿様と家来がウマに乗って」WoO33-28。
  15. Rosslein ウマ 「別れ」op14-5、「ひとりの騎士が」WoO33-10、「彼女におやすみと言おう」WoO33-18。
  16. Schaflein 小羊 「子守唄」WoO231-10に5箇所。「美しい羊飼いの娘」WoO33-1。
  17. Schlange ヘビ 「スペインの歌」op6-1、「ああ、この眼差しを背けたまえ」op57-4、「サロメ」op69-8。
  18. Tigrin 雌トラ 「つれない娘」op58-3。
  19. Ziegenbock 雄ヤギ 「膝の上のお馬乗り」WoO31-8。

なお、二重唱曲「愛の道」op20-1には、DracheLowin雌ライオンMockeTigerトラが出現して楽しませてくれる。

動物全体で鳥の約半分である。

さすがのマッコークルもここはお留守である。

2009年5月11日 (月)

小夜鳥

「小夜鳥」は「Nachtigall」の訳語。西洋ウグイスとも言われる鳴き声が美しい鳥。ブラームス作品のテキストへの登場頻度ランキングの首位に君臨中だ。

作品番号97-1を背負った歌曲はずばり「Nachtigal」だ。

ピアノ伴奏部に現れる特徴ある音形といい、彫りの深いヘ短調の響きといい、一度はまると抜けだし難い魅力に溢れている。

この作品のテキストをブラームスに供給したのは、クリスチャン・ラインホルトという人。作品97-2「船上にて」も彼の作だ。テュービンゲン大学の教授で専門は刑法。

驚いたことにこの人どうやらマリア・フェリンガーの実父らしい。ジーメンス&ハルスケ社ウィーン支社長、リヒャルト・フェリンガーの妻、マリアは当時物珍しかったカメラも器用に扱った。晩年のブラームスの貴重な映像を残してくれた。この家族とブラームスは親しく交流し、ウィーンの屋敷で私的な演奏会も頻繁に催された。

こうした交流の中で、ブラームスはマリアの父の作品に曲を付けたのだと思う。マリアは実はすぐれた歌手た。夫のピアノ伴奏でブラームスの歌曲をほとんど歌うことが出来たという。つまりマリアは父の詩にブラームスが曲を付け、夫に伴奏させて歌ったことはほぼ間違いない。

羨ましい。

2009年5月10日 (日)

愛鳥週間

本日5月10日から16日まで愛鳥週間ということらしい。ブログ「ブラームスの辞書」では現在歌曲特集を実施中だ。この手のイベントはコラボがお似合いだ。つまり逃がさず便乗である。

ブラームスの歌曲に現れる鳥たちをリストアップした。もし昨年秋の願掛けが実って、ブラームスの誕生日までに20万アクセスに達していれば、「アクセス御礼ネタ」として、鳴り物入りで公開していたところだ。本来元日ネタとしても不思議ではないおバカネタだが、思い切って公開する。人名索引がとても充実しているマッコークルも、鳥名索引はさすがに掲載が無いので、してやったりだ。

例によってウムラウトを赤文字で示す。

  1. Aar  「雲が太陽に向かって」op6-5にただ一度。Adlerの詩形。
  2. Adler  「愛の道」op20-1にただ一度。これは二重唱。
  3. Drossel つぐみ 「調べのように」op105-2にただ一度。
  4. Geier はげたか 「リート」op3-4の他op75-1の二重唱「エドワード」に4回現われる。
  5. Hahn おんどり 「恋人の許へ」op14-6。WoO33-16とWoO33-18に各1箇所。
  6. Henne めんどり 「めんどり」WoO31-5のタイトル。曲中に「Hennlein」として16回出現する。
  7. Kauz みみずく 「夏の宵」op84-1にただ一度。
  8. Lerche ひばり 「ひばりの歌」op70-2のタイトルに出現。「永遠の愛」op43-1、「にわとこの木のあたりで」op63-6、「ひばりの歌」op70-2テキストに2回、「春の歌」op85-5に出現。
  9. Mowe かもめ 「リート」op3-4に3度。
  10. Nachtigall ナイチンゲール 「小夜鳥は翼を動かして」op6-6のタイトル、「小夜鳥に」op46-6のタイトル。「小夜鳥」op97-1のタイトル。「小夜鳥は翼を動かして」op6-6テキストに3度、「セレナーデ」op14-7、「あなたどこでためらっているの」op33-10、「五月の夜」op43-2、「小夜鳥に」op46-6に3度、「わが恋は緑」op63-5、「歎き2」op9-2、「サロメ」op69-8、「春は優しい恋の季節だ」op71-1、「夏の宵」op84-1、「森のしじまに」op85-6、「死はさわやかな夜」op96-1、「小夜鳥」op97-1、「あそこの牧場に」op97-4。他「愛の歌」op52の15番、四重唱「ああ美しい夜」op92-1、ドイツ民謡集に計8回出現。
  11. Schwalbe つばめ 「つばめは飛び去ってゆく」op7-4のタイトル及び同テキストに2度。「古き恋」op72-1、「娘は話しかける」op107-3。他四重唱op112-6に2度出現。
  12. Schwan 白鳥 「恋人の許へ」op14-6、「夜になっても床につけない」WoO33-38。
  13. Spatz すずめ 「いちご畑で」op84-3に2度。
  14. Storch こうのとり 「古き恋」op72-1。
  15. Taubchen 小ばと 「リート」op3-4、「あの娘のもとへ」op48-1、「日焼けした若者が」op103-5、他四重唱op103-2に3度。
  16. Taube はと 「リート」op3-4、「古き恋」op72-1。
  17. Tauben はと(複数)「鳩によせて」op63-4のタイトル。「五月の夜」op43-2、「鳩に寄せて」op63-4テキストに2度。

出現のランキングは以下の通り。複数や縮小形を合算してある。

  1. Nachtigall ナイチンゲール 31回
  2. Henne メンドリ 17回 
  3. Taube はと 11回
  4. Schwalbe つばめ 7回
  5. Lerche ひばり 5回

その他漠然と「鳥」または「小鳥」を意味する「Vogel」「Vogelein」「Vogerl」が合計32回ある。

2009年5月 9日 (土)

バブル崩壊

今日本は昨年秋に始まった世界的不況のまっ只中にいる。それは「バブル崩壊」と形容される株価の暴落に象徴されている。

1873年5月9日だから今から136年前の今日、ウィーンの株式市場が大暴落を起こした。1871年の普仏戦争勝利により50億フランもの巨額の賠償金を獲得したドイツがバブル経済状態に陥った。その資金は一部がオーストリアに流れ込んでいた。ベルリン株式市場の暴落が波及するのはむしろ当然だった。1866年普墺戦争に敗れた混乱からようやく立ち直り、ウィーン万国博の開催にこぎつけた途端の出来事だった。これによって引き起こされた不況で何が起きたか、現代の日本人に説明が要るとは思えない。8つの銀行が破産し、40の銀行が清算に追い込まれたという。ドイツがこの不況から脱するのは1895年とされている。

1874年1月にはオーストリア政府つまり皇帝の旗振りで「中小企業支援のための皇帝フランツ・ヨーゼフ基金チャリティーコンサート」が開かれる。これにブラームスも出演しているのだ。伝記にもちゃんと書いてあるけれど前後の脈絡が語られていないことが多いので、ちょっとした違和感を感じることもある。この不況によって疲弊する中小企業の救済が目的とすれば、すんなりと腹にはいる。

そして庶民が生活を切りつめるのは明らかだ。ウィーン市民が演奏会に出かける回数を減らすことは想像に難くない。

これにブラームスの経歴を重ねてみる。1872年秋のシーズンから1875年春まで丸3年楽友協会の芸術監督の座にあった。つまりこのバブル崩壊は監督在任のまっ只中だったということだ。1872年秋に始まった最初のシーズンが4月に終わった後だから、影響を受けたのは1873年秋からの2年目のシーズンだ。

3年を勤め上げた後、契約の更新に応じなかった原因が伝記にも書いてある。ブラームスが取り上げるプログラムが渋すぎて、水面下でブーイングが貯まったことに原因を求めることが定着している。曲目を見ればその説明でも一応納得できるのだが、現実はもっとシビアで、はっきり言って演奏会の売り上げが落ちたというのが実態なのだと思う。でもそれはブラームスの選曲以前に、バブル不況で客足が遠のいたためだと解したい。しからばとばかりに何とか市民に来てもらおうと、選曲に匙加減を施す機転が利かなかったのだと想像したい。

成績不振の責任を監督に問うのは何もサッカーだけの話ではない。

2009年5月 8日 (金)

信心が足りない

寺社仏閣にすがった願い事が成就しなかった際の理由としてもっとも一般的な例だ。

お参りの回数なのか、賽銭の額なのか、お守りのグレードなのか、気合いなのか、いろいろ細かい分析は可能だが、これらが便利にひっくるめられている。

昨年11月3日の記事「最小目盛」で20万アクセスがブラームスの誕生日に間に合うようにと願を掛けた。結果はご覧の通り、まだ20万アクセスには届かない。

理由は簡単だ。つまり「信心が足りない」のだ。

あの願掛けの時点で、目標達成には1日平均270アクセスが必要だった。その後本日までの1日平均アクセスは200がやっとという惨状だ。

まだまだ修行が足りぬということだ。「その程度で願いを聞く訳には参らぬ」とブラームスが言っている。

2009年5月 7日 (木)

4つの厳粛な歌

作品番号121を背負うブラームス最後の独唱歌曲だ。1896年5月7日ブラームス63歳の誕生日に完成した。この世で迎える最後の誕生日を自ら祝ったかのような感じだ。

「最大の内容を最小の形に盛り込んだ」というガイリンガーの言葉は含蓄がある。同感だ。ここから作品解説や私の感想などを連ねないことはとても重要だ。

大好きな曲なのだが、だからといってあまり頻繁に聴いていない。とりわけ第3曲がお気に入りであるとだけ申し上げておく。

一つだけ残念なことがある。

現在ウィーンの楽友協会に所蔵されているスケッチには、オーケストレーションの下書きが残っているという。管弦楽伴奏で聴いてみたかった。

2009年5月 6日 (水)

イブに聴きたいブラームス

イブと言ってもクリスマスイブではない。明日がブラームスの誕生日だから今日はブラスマスイブである。イブに聴きたいブラームス作品をいくつかあげる。

  1. Weihnachten WoO31-12 これまさにドイツ語でクリスマスそのもののことだ。ロベルト・シューマンの子供たちへとの献辞が誇らしげな「子供のための14の民謡」のうちの一つだ。
  2. In stiller Nacht  Woo33-42 「49のドイツ民謡集」の42番目、つまり独唱の大トリを飾る絶唱。テキストは直接クリスマスと関係がないが、雰囲気は「聖しこの夜」に匹敵する。
  3. 「五月の夜」op43-2 5月6日の夜に聴くにはピッタリの作品である。今夜はサンタにならねばならぬ。
  4. 「一輪のバラが咲いて」op122-8。ブラームス最大の作品番号122を背負うオルガンのためのコラールから。元になったコラールはドイツの古いクリスマスキャロルだが、バラと言うからには今が聴き頃かもしれない。
  5. 宗教的な歌曲 op30。これもテキストは本当のクリスマスとは関係が無い。敬虔な気持ちにさせられるという点に関しては折り紙つきである。「澄み切った長調は悲しい」を雄弁に物語る。

失笑は元より覚悟の上だ。

2009年5月 5日 (火)

谷の百合

「谷の百合」とはつまりスズランのことだ。高等学校の校歌の歌詞に出てきたおかげで知っている。

ブラームスの交響曲を年代順に列挙する。

  • 第1番ハ短調op68 1876年
  • 第2番ニ長調op73 1877年
  • 第3番ヘ長調op90 1883年
  • 第4番ホ短調op98 1885年

完成年を見ると2曲一組と見ることも可能だ。

不思議なことがある。1番と2番の間に69、70、71、72という4つの作品番号が存在するが、全て独唱歌曲だ。同様に3番と4番の間には7つの作品番号が存在しているが、全て声楽曲(独唱歌曲、合唱、重唱)になっている。ペアになっている2つの交響曲の間に器楽作品が発表されていないということに他ならない。ペアとなる交響曲同士お互いを補完しあっていると指摘されていることを裏付けているような気がする。交響曲の構想を練っている間、片方に盛り込みきれなかったアイデアをもう片方に反映させているという説は魅力的である。その間声楽曲を作る以外は交響曲に没頭しているブラームスの姿勢の裏返しと思われる。

2つの交響曲に挟まれた声楽作品は、谷間のユリを思わせる可憐な作品が多い。

2009年5月 4日 (月)

カルベック

今日はマックス・カルベック(Max Kalbeck1844-1921)の命日だ。

ブラームスの友人。20世紀になってから全4巻からなる大著「ブラームス伝」を著した。現在もなおブラームス研究の最重要文献の座に君臨中だ。

音楽評論家としても名高い。ブラームス擁護の論客だ。ウィーンの有力誌への執筆活動を通じた影響力は、ハンスリックにさえ匹敵している。作品の評価をめぐってのブラームス本人との丁々発止のやりとりは、後世の愛好家にとって大変興味深いものである。

この人にはさらに作家の一面もある。脚本家、翻訳家としても活躍した。

もっとある。ブラームスの歌曲「夢に遊ぶ人」(Nachtwandler)のテキストはカルベックによるものだ。op104-3を背負ったアカペラの合唱曲のテキストもカルベック。ブラームスがカルベックの作品に曲を付けたのはこの2例だけだ。

たった2例とはいえ、この「夢に遊ぶ人」は絶品だ。一つ前の作品番号op86-2絶唱「Feldeinsamkeit」を何回も聴いているうちに見つけた。ベスト10に入る。

2009年5月 3日 (日)

初交響曲

今日は我が家にトロンボーンがやってきてから丸1年の区切りだ。だからという訳ではないが次女を連れて演奏会に出かけた。高等学校のオーケストラの演奏会だ。ヴァイオリンの先生の薦めもあって選んだ。偏差値はともかく距離的には十分通学可能な高校だ。

同世代の子供たちの真剣な姿に触れさせる目的だ。ブラスバンドのステージは聴いたこともあるし出演したこともあるが、オーケストラははじめての経験になる。メインはドヴォルザークの交響曲第8番だ。つまり初交響曲である。

<第一部>

  • ハチャトゥリアン:「仮面舞踏会」よりワルツ
  • モーツアルト:フルート協奏曲第1番より第1楽章
  • ハンス・ジマー:「パイレーツオブカリビアン」
  • ビゼー:「カルメン組曲」
  • ボロディン:歌劇「イーゴリ公」よりダッタン人の踊り

<第二部>

  • ドヴォルザーク:交響曲第8番

もりだくさんの第一部。モーツアルトの協奏曲も高校生がソロを吹いた。カルメン組曲はフラメンコ付きだし。オケはキレキレだった。中学生のブラバンで驚かされたのはつい最近だ。子供たちがわき見も振らずに物事に打ち込むとこうなるという見本。

休憩時間と終演後ロビーで室内楽をいくつか披露してくれた。弦楽器5本によるブリテンのシンプルシンフォニーだ。フィナーレだけとは言え暗譜だ。これには心底驚いた。

「こりゃあすごいドヴォルザークになるわい」と思って聴いたドヴォ8は、案の定凄かった。第3楽章以降が速めのキビッキビのテンポで驚いた。フィナーレのフルートソロどうなることかと思っていたが、モーツアルトのコンチェルトでソロを吹いた三年生が、サクッと何気に余裕をかましていた。

アンコールはなんと引退する3年生だけでブラームスのハンガリア舞曲第6番。そうこれは3年生の引退公演でもあるのだ。最後は全員でラデツキー行進曲。

見れば次女がとなりで身を乗り出している。この中に次女はいないと気がついた。

キラキラした充実の2時間20分。ああ私も昔はこうだったと感慨にふけるばかりだ。ところが次女は、この中に入れるまでまだ2年あるのだ。遅過ぎるよりは早過ぎるほうが数段マシだと心から思う。

オケに入ってトロンボーンやりたいと言い出しはせぬか心配になる。

2009年5月 2日 (土)

歌曲の長短

民謡を除くブラームスの歌曲の長さの話だ。

長さを測る尺度には大きく分けて2つある。小節数と演奏時間だ。どちらにも弱点があるから両方を上手く勘案する必要がある。

まずは長いほう。これは作品33「ティークのマゲローネのロマンス」の1番が第一候補だ。257小節ある。演奏時間だと3~4分だから最長とは言えない。むしろ小節数は187にとどまりながら6分を超える演奏もある6番を最長と認定したい。これに次ぐのは作品43-1「永遠の愛について」か「雨の歌」op59-4だ。小節が100を超え、演奏時間も5分近い。

続いて短いほう。小節数で申せばわずか12小節の「Gang zu Libchen」が最短だ。しかしこれは有節歌曲で、リピート記号によって4コーラスにまで拡大する。実質48小節だ。むしろop94-5「家も無く故郷も無く」が有力だ。全長20小節。演奏時間は1分を切る。我が家のCDは3種で、35秒、45秒、32秒だ。

ハルムによるテキストのニュアンスに寄り添って裏拍を殊更に強調した伴奏が、さめざめとした気分を盛り立てる。驚くべきは曲頭に置かれた「Tempo giusto」だ。演奏者を突き放すかのような指示だ。この指示で演奏者が正解のテンポを割り出すことを疑っていないのだ。常に裏拍を取る右手と、拍頭を司る左手のやりとりが表現の急所だ。その面白味を出すには自ずと特定のテンポにならざるを得まい。

2009年5月 1日 (金)

Luft

大好きな言葉の一つだ。「風」「空気」「大気」「息」「空」「気配」「雰囲気」などの意味がある。英語の「Air」に近いような感じ。著名な航空会社の名前にもなっている。

作品57-8に「Unbewegte,laue Luft」という歌曲がある。このタイトル、日本語への転写が難しい。「Unwebegte」は、「動きのない」という意味で、「laue」は生暖かいだ。何故かこれで「風もそよがぬ和やかな大気」という邦訳が出回っている。

ダウマーによる4連のテキスト。1連目だけが情景の描写で2連目以降が作者の心情だ。何と言っても1連目の情景描写が素晴らしい。風も無く蒸し暑い夏の夜だ。ピッタリの日本語がある。「凪」だ。凪によって空気が停滞している様子が音楽によって全く過不足無く描かれている。テキストが庭の噴水にさしかかるところで8分音符が目を覚まし、可憐なトリルがテキストとシンクロする。

一連の描写のまさに中央にいるのが、本日のお題「Luft」だ。

さすがにブラームスだ。空気が読めている。

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