遥かなる恋人に
ベートーヴェンの歌曲の話題。
歌曲集「遥かなる恋人へ」op98が名高い。全6曲からなるこの歌曲集は、ロベルト・シューマンも愛していた。特にその第6曲「受けたまえこの歌を」を愛好し、クララのために何回か引用している。とくに弦楽四重奏曲第2番第4楽章が名高い。
シューマン邸を訪問して間もなくブラームスはピアノ三重奏曲第1番ロ長調を完成させる。現在では「初版」と付言することも忘れてはなるまい。なぜなら1890年になって本人の手によって改訂が施されているからだ。この改訂の際に第4楽章チェロによる芳醇な第2主題が、ごっそりと削除の憂き目にあった。初版第4楽章104小節目以降のフレーズだ。
実はこの旋律がベートーヴェンの「遥かなる恋人に」の第6曲「受けたまえこの歌を」からの引用だと指摘されている。シューマン夫妻と親しくなったブラームスが、その直後の室内楽に、シューマン夫妻ゆかりの旋律を取り入れたと解されている。
その由緒ある旋律を1890年の改訂に際して、何故根こそぎ抜き取ったかという疑問が生じる。ブラームスの作品は、他作曲家との類似を古来あまた指摘されてきた。けれどもブラームスは、それに対し沈黙を貫いている。作品に改訂を施すこともしていない。
この作品だけ何故という疑問を払拭できないでいる。
今日はクララ・シューマンの命日だ。
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