おお涼しき森よ
作品72-3を背負って変イ長調、2分の3拍子、Langsamでゆったりと歌われる森の描写。どんな演奏でも最大2分半。楽譜にして2ページ全長25小節の小品ながら退屈することがない。
森の描写のようでいて実は、その森の中を歩む恋人への呼びかけだ。テキスト側の表現の肝にあたる「im Herren tief」(心の奥深くで)の部分、楽譜にして11小節目から2小節間、音楽は意表をつく変ヘ長調に転ずる。Dに付与されるナチュラルの色艶を一瞬味わった後、半音上のEsにせり上がって冒頭主題が回帰するあたり、醍醐味である。
8小節目に「おや」という場所がある。冒頭の「B」の音の上に小さな音符で「F」が記載されている。直前の音「C」から全音下がる「B」がメインルートなのだが、「F」への4度跳躍も認められているということだ。
我が家の10種のCDのうち、「F」に跳んでくれているのは以下の3人だ。
- エリー・アメリング
- トマス・クヴァストホフ
- 小松英典
「夕立」でただ一人影譜を歌ってくれていたロベルト・ホルは今回はノーマルだった。
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