こおろぎ
蟋蟀と書く。歳時記によれば秋の季語だ。旧暦で8月からが一応秋ということになっている。最も一般に観察される秋の虫という位置づけだ。鳴き声を頻繁に聴くという訳だ。
5月12日の記事「動物索引」を思い出すといい。そこには「Grille」があった。つまりlこおろぎだ。ブラームス歌曲の中で2箇所に現われる。
- 夏の宵op85-1
- 野のさびしさop86-2
タイトルを見て判るとおりop85-1で歌われる季節は夏だ。「野のさびしさ」には直接季節を示す言葉は無いが、「背の高い緑の草」が出てくるから一応夏が有力かと思われる。どちらのテキストにも共通しているのは、作者はこおろぎの姿そのものを見てはいない。鳴き声を聞いているのだ。こおろぎの出す音こそが描写の主眼になっている。
さらに私好みの偶然がある。
5月29日の記事「四色問題」を思い出して欲しい。そこでは、ブラームス歌曲において1つの作品に現われる色の数を取り上げた。最大4色を用いた作品が2つあると書いた。それが本日話題の2作品になっている。
象徴的な色4つを配して読者の色彩感覚を刺激する一方、こおろぎを配置することで音のイメージまで喚起しようとしているように思える。
おそらくブラームスはこおろぎの鳴き声がイメージ出来ている。後者「野のさびしさ」1連目、楽譜にして11小節目に現われる「Grillen」は、この周辺では最も高い音Desを当てられた上に、弾むリズムと相俟って、コオロギの鳴き声の巧妙な描写になっている。
例によって毎度毎度の疑問。ブラームスの作品では、どうやら夏の描写らしいが、季語としては秋だ。現代の生活実感と季語はしばしばズレているから、気にしないという手があるのだが、ブラームス作品に現れる「Grille」が、そのまま歳時記の「蟋蟀」にあたるかについては、ひとまず保留しておくことにする。
<魔女見習い様
ホンの思いつきのおバカ記事に、毎度お付き合いいただきありがとうございます。
その上「スッキリ」のお役に立てたとすれば嬉しい限りです。
投稿: アルトのパパ | 2009年6月 3日 (水) 18時35分
先日から「こおろぎ」が、ものすごーく気になっていました。
本日の記事で、かなりスッキリ!
投稿: 魔女見習い | 2009年6月 3日 (水) 15時40分