狂言回し
歌舞伎の用語だろうと思う。観客に筋の流れを理解してもらうために必要な役柄とでも申し上げておく。転じて「物事を表立たずに仕切っている人物」という意味が派生している。「黒幕」よりは陰湿な感じがしない。
歌舞伎に存在するくらいだからオペラにもと考えるのが人情だ。
ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」におけるベックメッサーについてブラームスが感想を述べている。例によって音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第2巻61ページ。お相手はホイベルガーだ。
ブラームスはマイスタージンガーにおけるベックメッサーの役回りを高く評価している。一方ベックメッサーにはモデルが居ると古来指摘されてきた。「ブラームス擁護反ワーグナー」の論陣を張るハンスリックだ。劇中では皆から嘲笑されるという「いじられキャラ」で、「あら探し屋」の意味もあるというから痛烈だ。ブラームスはこの役回りこそがストーリーの進行に重要な役目を果たしていると考えているようだ。もしかすると「狂言回し」かもしれない。
ハンスリックがモデルであることに気付いていたのだろうか。
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