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2009年9月28日 (月)

伝播の向き

日本の古代史を学んでいると、様々な文物が大陸からもたらされたことが解る。先進地中国に学んだという構図だ。朝鮮半島を含む大陸と日本から同じ遺物が出土した場合、あるいは同様な遺跡が発見された場合、それらは直ちに「大陸から日本に伝えられた結果だ」と解釈されることが多い。つまり「伝播の向き」は「大陸発日本行き」なのだ。

高校時代からあまのじゃくだった私は、何か一つくらい逆向きのものもありゃせんかと考えた。朝鮮半島との関係だけで申せば「コメ」なんかが逆向きだと面白そうだと今でも考えている。

ブラームスとドヴォルザークの関係においても「伝播の向き」を考えることがある。

ドヴォルザークが音楽家として世の中に認知されるにあたりブラームスの果たした役割はとても大きい。この点疑問の余地はない。ところがここに大きな落とし穴があると思う。無意識のうちに「ブラームス発ドヴォルザーク行き」という「伝播の向き」を心の中に設定してしまいがちになる。

ドヴォルザークの作品解説にはブラームスからの影響を仄めかす記述が少なからず現れる一方で、ブラームス作品ではドヴォルザークからの影響が取り沙汰されることは無い。

ブラームスはドヴォルザークより8つ年上なだけだ。シューマンとブラームスよりずっと近い。隣国で活躍する気鋭の作曲家として同時代を生きたのだ。ブラームスの弦楽四重奏が世に出たとき、ドヴォルザークは既に6曲の弦楽四重奏を書き上げていた。交響曲でも5曲がブラ1に先行する。

実際の作品の中に、私のような素人でも解るような痕跡が残るかどうかは別として、伝播の向きを一方的に決めつけるのはちょっと危ないと感じる。

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