ト短調ピアノ協奏曲
作品番号33を背負うドヴォルザークが遺した唯一のピアノ協奏曲だ。完成は1876年だが、初演は1883年を待たねばならず、その間にブラームスの2番に先を越された。
あるピアニストが「ピアノが目立ちにくい」という感想を漏らした。
これに対するドヴォルザークのコメントが残っている。
「私はピアノが管弦楽に埋没する協奏曲を書いた」「みんなでピアノを伴奏という仕組みにはなっていない」
私のようなブラームス好きには嬉しいコメントだ。一部から「管弦楽に対抗する協奏曲」と言われてる1番、交響曲の輪郭をトレースする2番を持ち出すまでもない。これらのコメントがドヴォルザークのコンチェルト観の投影だとするならブラームスが協奏曲に求めたものと一致していると感じる。大事なことはドヴォルザークのト短調ピアノ協奏曲の完成時、ブラームスの4つの協奏曲のうちニ短調ピアノ協奏曲、つまり1番だけしか世に出ていなかったという事実だ。ヴァイオリン協奏曲さえ出現前だ。
チェロ協奏曲が、こうした価値観から育まれたとするなら、ブラームスの絶賛もむべなるかなである。
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