大損
昨日の記事「財産管理人」でジムロックとブラームスの関係を推測した。その中でジムロックがブラームスの資産を運用に回していたのではないかと述べた。
実はそれにはちゃんとした証拠がある。
1895年ジムロックはブラームスに詫びる。ブラームスの資金を投じて購入した株が、企業の破綻で紙クズにでもなったのだろう。ジムロックの判断で投じた20000マルクが損失となった。ジムロックはブラームスに損失の返済を申し出たのだ。
ブラームスは、これを「走れメロス」的言い回しで毅然として拒絶する。もちろんこの投資話自体は、事前にブラームスに伝えられてたらしいが、そんなことは話していた間だけ念頭にあったと回りくどい慰め方をするブラームスだ。
ジムロックの過失による20000マルク約1000万円の損失について、少なくとも書簡上では全く非難していない。交響曲1曲の原稿に対しての支払いが15000マルク(750万円)だったこと思い出さねばならない。あるいはジムロックの競合相手が第3交響曲に20000マルクを提示した際、ジムロックはブラームスに15000マルク以上の支払いは経営に影響する旨言明していることから、20000マルクの重みが類推出来よう。
このエピソードで浮かび上がるのは2人の揺ぎ無い信頼関係だ。どうも商売上の旨味ばかりではない絆を感じてしまう。
ジムロックという人物を、ドヴォルザークの伝記で読むか、ブラームスの伝記で読むかによって印象が180度違って来ることが身に沁みる。
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