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2009年11月16日 (月)

注文に応じる

古来作曲家は注文に応じて作曲することが多かった。バッハの場合はカントルとしての職務だから必ずしもこの表現は当たらないが、ベートーヴェンくらいまでの時代で貴族の庇護を受けていた作曲家は、雇い主の貴族の注文に応じて作曲していたことが判る。

ところがブラームスになると伝記を詳しく読んでいても誰かの求めに応じて作品を生み出していたと形容されていない。自らの楽想の赴くままに作曲して、出版社がそれを高く買うという需給関係が成り立っている感じだ。特定の演奏家の存在が作品を生み出すキッカケになったことはあっても注文に応じてというのはほとんど見かけない。

一方でジムロックをはじめとする出版社は、既存の管弦楽、室内楽作品を2手または4手のピアノ用への編曲だけは、しきりにブラームスに要請した。ブラームスはこの要求については、律儀に対応していた。

最近ドヴォルザークの伝記を読んでいて感じるのは、注文に応じてとか勧められてという作品が多いのだ。モラヴィア二重唱、スラブ舞曲など初期の作品に特にその手が多い。挙げ句の果てにジムロックに至っては「ドヴォルザークが注文通りの曲を書きたがらない」と愚痴をこぼす有様だ。

売れる作品を書かせたいという出版社側のロジックが勝ってしまっているように思えてならない。ジムロックの対応がブラームスとドヴォルザークで違っていたことは確実だ。どちらが例外なのか知りたいところだ。

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