歴史的視点
大きく振りかぶったタイトルだが大したことはない。CDの話だ。昨日「モラヴィア二重唱」がチェコ語で歌われたCDを発見したと書いた。一方ドイツ語で歌われたCDは既に持っていたが、それが思わぬお宝だった。
ソプラノがバーバラ・ボニーで、メゾソプラノがアンジェリカ・キルヒシュラーガーという、デリシャスなCDだ。「出会い」というタイトルが付けられている。フェリクスとファニーのメンデルスゾーン姉弟、シューマン、ブラームスの二重唱曲に続いて、ドヴォルザークのモラヴィア二重唱曲が収められている。もちろん私は、このうちのブラームスの二重唱曲たった3曲のために入手したものだが、昨今別の意味ではまり出した。
モラヴィア二重唱曲がドイツ語で歌われているだけがその理由ではない。
モラヴィア二重唱曲は、プラハの裕福な商人の依頼によって書かれた。ネフというその一家にピアノを教えていたドヴォルザークが、一家のアンサンブルの楽しみのために、何か民族的な作品をと求められたことが作曲の契機だった。ネフからの具体的な依頼の理由が興味深い。「家族のアンサンブルではシューマンやメンデルスゾーンの二重唱を好んで演奏していたが、それらはどれもドイツの作品だ」というのだ。
先のCD「出会い」はこれらの経緯を反映した選曲になっている。ネフ一家が好んだであろうドイツ系の二重唱曲を先行させた後に、モラヴィア二重唱曲に移る。モラヴィア二重唱曲成立の歴史的経緯を踏まえている。
ネフが言う「ドイツの作品」にブラームスが含まれていたかという点には疑問もあるが、「出会い」というタイトルにも説得力が出てくる。
私がはまっている理由がもう一つ。そこに収められた二重唱たちの可憐な味わいが最大の理由だ。昨日話題にしたチェコ語版に比べると、少しは言葉が判ることが、味わいを親しみ易いものにしている。
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