ブラームスのジムロック評
ブラームスとジムロックとの蜜月関係を裏付ける資料には事欠かない中、ブラームスがジムロックをどう評価していたのかを直接指し示す記述は少ない。ブラームス関係の伝記を捜しても見当たらないのが現状だ。
ところが、ドヴォルザークの伝記の中にそれがあった。1983年に出版されたカレル・V・フリアン著、関根日出男訳「ドヴォルザークの生涯」という本だ。あまりに興味深いので190ページの問題の部分をそのまま引用する。
ジムロックの名前が上がると、ブラームスは愉快そうにニヤリとした。
「ジムロックか」そう言って、青い天井に向けて吹いた。「あいつは老獪な奴だ、ずる賢さを画に描いたようだ!賭けてもいいが、あんたの作品の礼に余分な金は一文も出さんよ!いやいや何もおっしゃるな、あいつと取引を始めたと時、わたし自身が思い知らされたことだから。」
「何か出そうと思い立ったら、1ヶ月以内にやる。他の出版社じゃあ、1年かそれ以上もかかるんだ。それに顔が広い、世界中にコネを持っている。これはわたしらにとっての最大の利点だ、、ジムロックは名前が売れており、商売のコツを心得とる」
これは、1879年12月のブラームスとドヴォルザークのウィーンにおける会見の場面だ。つまりブラームスがドヴォルザークに向かって「ジムロックの人物評」を披露しているということになる。著者フリアン先生の創作がどの程度混じっているのか、十分な注意が必要だが、提示されたジムロック像には、違和感がない。機を見て敏なビジネスマンという側面を余すところ無く伝えている。上記前段ではドヴォルザークに注意を促し、後段ではジムロックの長所や取引上のメリットを伝えていると思う。創作であるにしてもよく考えられていると思う。
交響曲1曲に15000マルクを受け取っているブラームスの発言としては、やや疑問もあるが、ドヴォルザークに対する警告の意図が強調されているとすれば、許容範囲である。
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