拍子という切り口
ブラームスの出世作「ハンガリア舞曲」は全4集からなるピアノ連弾作品集だ。あわせて21曲だが、その拍子は全て4分の2拍子になっている。ハンガリーに起源を持つ雑多な舞曲の集まりのハズだが、結果として4分の2拍子の集合体になっている。
レイトスターターのドヴォルザークは「ハンガリア舞曲」を手本にしたが、拍子という点ではもっと多彩だ。素材をハンガリー以外の東欧に求めながらも拍子だけは4分の2にこだわらなかった。
いわゆるクラシック音楽には舞曲を起源に持つジャンルは多い。分類をする場合、拍子が有力なツールになる。ワルツやマズルカは4分の3拍子になることが多い。全16曲からなるスラブ舞曲に採用された舞曲は以下の通りだ。
- フリアント ボヘミア。2分の2と4分の3が交互に現われる。
- ドゥムカ 4分の2拍子 ウクライナ
- ポルカ 4分の2拍子
- ヴォフチャーツカー 4分の2拍子 ブルノ
- マテニーク 4分の2拍子 南あるいは東ボヘミア
- スコチナー 4分の2拍子
- ソウセツカー 4分の3拍子
- ヴルターク 4分の2拍子
- テトカ 4分の2拍子 モラヴィア
- クヴァピーク 4分の2拍子 チェコ
- オドゼメック 4分の2拍子 スロヴァキア
- シュパツィールカ 8分の4拍子 チェコ
- スタロダーヴィニ 4分の3拍子 ポーランド?
- コロ 4分の2拍子 ユーゴ
- マズルカ 4分の3拍子 ポーランド
ご覧の通りの多彩さだ。
さてさて12月17日の記事で、「フモレスケ」を「突き詰めない性格のメロディアスな小品」と位置付けたが、拍子を切り口に見てみると興味深いことが判る。「8つのフモレスケ」op101は、すべて4分の2拍子で出来ている。また没後に刊行されたフモレスケ嬰へ長調も4分の2拍子だ。偶然とみなすのはフェアでない。特定の拍子への集中を見るとフモレスケの根底には舞曲集のノリが感じられる。
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