審査の方法
オーストリア国家奨学金のドヴォルザークの初受賞は1875年1月に決定した。応募はその前年の7月だった。審査に半年かかっていることになる。ドヴォルザークは交響曲第3番と4番その他をもって応募した。ドヴォルザークの才能を絶賛する審査員の声については1月11日の記事「講評」で言及した。
素朴な疑問がある。
ドヴォルザークが応募した2つの交響曲は、審査にあたって実際に演奏されたのだろうか。答えはおそらく「No」なのだと思う。ブラームスほどの作曲家になると、総譜を見るだけで頭の中に音楽が鳴るのだ。ピアノを使って数フレーズを再現することはあったと思うが、フルオーケストラで鳴らされてはいないだろう。オケのメンバーを揃えたり、場所を確保したり、パート譜を用意するのは手間とお金がかかる。
ドヴォルザークだけがこうした仕打ちを受けた訳ではなかろう。全応募作品のうち管弦楽曲については、実際には鳴らされることなく序列が決められたという意味では実に公平だ。
才能の有無は音にするまでも無く、既に楽譜に現われるのだ。楽譜を舐めてはいけないということだ。
さらに審査の過程はともかく、晴れて栄冠を勝ち取ったドヴォルザークの応募作品が受賞作として公開の席で演奏された訳でも無さそうだ。
コメント