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2010年1月18日 (月)

手が出ぬ

先日ホルンソナタの楽譜を探しにショップを徘徊していた。首尾良くゲットで会計をしてホクホクとレジを離れようとした時、1枚のパンフレットが目にとまった。

モーツアルト交響曲第40番ト短調のファクシミリ譜が発売されるという。

一瞬で脳味噌にアドレナリンが充満した。古楽譜コレクターだったブラームス自慢の筆頭が、モーツアルトのト短調交響曲の自筆譜だったからだ。ちょっと詳しい伝記には大抵書いてある。ピアノ五重奏曲を献呈した返礼にヘッセン王女アンナから下賜されたものだ。以来ブラームスは亡くなるまでこれを大切に保管していた。遺産を引き継いだウィーン楽友協会の所蔵となって今に至る。

そのファクシミリ譜の発行元も楽友協会だった。間違いないと思ってパンフを詳しく読むと「元々の所有者はブラームスだった」とはっきり書いてある。あわせて「19世紀半ばまで買い手が現れなかった」というエピソードも紹介されている。「もしや」と思うことがある。「19世紀半ばまで買い手がつかなかった」という状態を打破したのは、ブラームスにこれを下賜したヘッセン王女アンナだったのではあるまいか。ピアノ五重奏曲op34の完成は1864年だ。19世紀半ばという表現と矛盾しない。ブラームスの古楽譜コレクターぶりを察知したヘッセン王女アンナが、何か喜びそうなものをと物色した結果ではなかろうか。

さらに凄いのは「ブラームスによって音の間違いに印が付けられている」とも書いてある。ということはつまりモーツアルトとブラームスの筆跡が共存している資料ということだ。お宝である。

価格は72000円。お宝度から見ればリーズナブルだと思う。そうは思うが「それでは」とばかりに買えるかとなるとそうはいかない。楽譜やCDのショップをうろつくのは気晴らしになるが、こればっかりはストレスだ。7200円だったらきっと買っていたと思う。72万円だったら、すっぱり諦めがつく。何とも微妙な価格設定だ。

ブラームス神社の賽銭はあてにならない。「ブラームスの辞書」が今年中に20冊売れたら買いに行こうと思う。まだ2冊しか売れていない。

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