室内楽の舞曲楽章
3月25日の記事「舞曲楽章の掟」でブラームスが交響曲における舞曲楽章に、主調を採用していないと書いた。多楽章ソナタで舞曲楽章が主調つまり第1楽章と同じ調(同主調含む)になるのは、古典派以来の伝統だ。交響曲においてブラームスがこの決まりをちっとも守っていない一方で、ドヴォルザークは律儀に守っていると指摘した。
しからばブラームスの交響曲以外の多楽章ソナタはどうなっているのかというのが本日の話題だ。つまりそれはほぼ室内楽だ。作品番号順に列挙する。
- ピアノソナタ第1番ハ長調→第3楽章ホ短調
- ピアノソナタ第2番嬰ヘ短調→第3楽章ロ短調
- ピアノソナタ第3番ヘ短調→第3楽章ヘ短調
- ピアノ三重奏曲第1番ロ長調→第2楽章ロ短調
- 管弦楽のためのセレナーデ第1番ニ長調→第2楽章ニ短調→第4楽章ト長調
- 管弦楽のためのセレナーデ第2番イ長調→第2楽章ハ長調→第4楽章ニ長調
- 弦楽六重奏曲第1番変ロ長調→第3楽章ヘ長調
- ピアノ四重奏曲第1番ト短調→第2楽章ハ短調
- ピアノ四重奏曲第2番イ長調→第3楽章イ長調
- ピアノ五重奏曲ヘ短調→第3楽章ハ短調
- 弦楽六重奏曲第2番ト長調→第2楽章ト短調
- チェロソナタ第1番ホ短調→第2楽章イ短調
- ホルン三重奏曲変ホ長調→第2楽章変ホ長調
- 弦楽四重奏曲第1番ハ短調→第3楽章ヘ短調
- 弦楽四重奏曲第2番イ短調→第3楽章イ短調
- ピアノ四重奏曲第3番ハ短調→第2楽章ハ短調
- 弦楽四重奏曲第3番変ロ長調→第3楽章ニ短調
- 【交響曲第1番ハ短調→第3楽章変イ長調】
- 【交響曲第2番ニ長調→第3楽章ト長調】
- ヴァイオリンソナタ第1番ト長調 舞曲楽章なし
- ピアノ協奏曲第2番変ロ長調→第2楽章ニ短調
- ピアノ三重奏曲第2番ハ長調→第3楽章ハ短調
- 【交響曲第3番ヘ長調→第3楽章ハ短調】
- 【交響曲第4番ホ短調→第3楽章ハ長調】
- 弦楽五重奏曲第1番ヘ長調 舞曲楽章なし
- チェロソナタ第2番へ長調→第3楽章ヘ短調
- ヴァイオリンソナタ第2番イ長調 舞曲楽章なし
- ピアノ三重奏曲第3番ハ短調→第2楽章ハ短調
- ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調→第3楽章嬰ヘ短調
- クラリネット三重奏曲イ短調 舞曲楽章なし
- クラリネット五重奏曲ロ短調→第3楽章ニ長調
- クラリネットソナタ第1番ヘ短調→第3楽章変イ長調
- クラリネットソナタ第2番変ホ長調→第2楽章変ホ短調
見ての通り興味深い。舞曲楽章の調が第1楽章の調に一致するもの、つまり「掟通り」を赤文字にした。青文字は同主調だ。赤文字プラス青文字は12曲に過ぎない。全体の約3分の1だ。しきたり通りが約36%にとどまるということだ。特に弦楽四重奏曲第3番以降赤文字はほぼ現れない。
交響曲だけが例外だったわけではなくて、全体の傾向を反映していると解したい。すごくブラームスっぽいと感じる。
鎌倉、長谷にて。5%咲きの消費税桜。
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