スケルツォのエンディング
新世界交響曲の第3楽章スケルツォの話だ。快速なテンポの4分の3拍子が、エンディングに向けて制動を効かせる場面でそれは起きる。299小節目から我らがヴィオラは、C線の第1ポジションで「E音」と「G音」を刻む。4分の3拍子の1小節目を6つに割る。何のことは無い8分音符の連続だ。他のパートは主題の断片を代わる代わる差し挟むが、ヴィオラだけは断固刻みながら音量を常に落とし続ける。
やがてダイナミクスが「ppp」に届く294小節目から、地味に厄介な難所がある。テンポを維持したまま、刻みの数を減じてゆくのだ。1小節の長さを変えないで、刻む数だけを「5」「4」「3」と減らして行かねばならない。いわゆる「オートマチックリタルダンド」である。インテンポで弾けば自動的にブレーキがかかったように聞こえる仕掛けだ。
ヴィオラのトップだった私は、この手が苦手だった。行け行けドンドンならOKだが、繊細なリズム感覚という奴が備わっていない。パート練習で弾けても全体になるとなんだかはまらないという状態だ。レコードを聴いても、もそもそしていてよく聞こえない。ちなみに先般話題にしたピアノ連弾版だとクッキリと聞こえて懐かしかった。
苦肉の策が考案された。小節の頭にメトロノームを入れる。それに合わせて「新検見川」「本八幡」「幕張」「稲毛」と言いながら刻む。「しんけみがわ」「もとやわた」「まくはり」「いなげ」だ。これらは大学があった鉄道沿線の駅の名前である。1小節に一駅を入れると、平仮名にして「6文字」「5文字」「4文字」「3文字」になっているから問題の部分の練習になる。実際の駅はこの順番ではないから、あくまでも練習のための方便だ。
実際の駅の順番でこの練習をするには、連続する4つの駅の平仮名が「6文字」「5文字」「4文字」「3文字」になるような区間を見つける必要がある。これが意外と難易度が高くて見つからない。
演奏会後かなりたって叔父の家を思い出した。新京成電鉄という私鉄に乗る。叔父の家は「元山」という駅で下車する。1つ手前は「くぬぎ山」で2つ手前が「北初富」だ。もしやと思って、元山駅の1つ先の駅を調べてみた。「五香」だった。これで「ごこう」と読む。
- きたはつとみ
- くぬぎやま
- もとやま
- ごこう
おお。しかも一番先頭の北初富駅の一つ手前が「新鎌ヶ谷」(しんかまがや)で6文字だから、いっそう楽譜にはまり込む。これで新世界交響曲のスケルッツォをエンディングに導く制動が練習出来ると思ったが後の祭りだった。
後半開始早々ドヴォルザークが泣いて喜ぶおバカな鉄道ネタ。
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<てぃんぱにゃー様
そうなんですよ。
でも武蔵野線には「船橋法典→市川大野→新八柱→新松戸」(ふなばしほうでん→いちかわおおの→しんやはしら→しんまつど)という「8→7→6→5」が存在していました。ところが市川大野と新八柱の間に、「東松戸」が出来てしまってあっけなく崩壊してしまいました。
JRも余計なことをしてくれたものです。
投稿: アルトのパパ | 2010年3月18日 (木) 18時08分
…前の書き込み、なんかおかしいですね…^_^;
名前は2文字から行けるし多くなれば(7連符とか)フルネームにすればいいわけで…
とりあえず何か苦労した覚えがあるって話でした(>_<)失礼っε=ε=┏( T_T)┛
投稿: てぃんぱにゃー | 2010年3月18日 (木) 18時03分
お久しぶりです。
やりました、連符に言葉はめて納める練習。
地名にすれば良かったんですね…人名でやってたので少ない方は5文字が限度で(笑)
新世界も吹奏楽版でやりましたが、そんな苦労があったんですねぇ…ヴィオラの代わりはサックスあたりが割り当てられてそうです。
投稿: てぃんぱにゃー | 2010年3月18日 (木) 17時57分