ジプシーの歌
ブラームスにもドヴォルザークにも「ジプシーの歌」がある。
ブラームスのものは「Zigeunerlieder」と綴られ、ソプラノ、アルト、テノール、バスによる四重唱で、全11曲からなる。作品番号103で1888年の作品だ。
ドヴォルザークのものは「Zigeunermelodien」と綴られるから「歌」というより「旋律」だ。こちらは独唱用で全7曲だ。ヘイドゥークというチェコの詩人によるテキストだが、作者本人によるドイツ語訳に曲がつけられた。ジムロックからのドイツ語の歌曲集の注文に答えたものだという。この内の4番が特に名高い。一般に「我が母の教えたまひし歌」という邦題で親しまれ、ドヴォルザークの歌曲最高傑作の座に君臨中である。また冒頭の1番「我が歌ひびけ」は、歌い出しがアウフタクトになっていて「ジプシーの歌」をアウフタクトで始めなかったブラームスと一線を画す。
1880年の作品だからブラームスより古い。何かというとブラームスからの影響ばかりが指摘されるドヴォルザークだが、この曲ばかりはブラームスに影響を与えた可能性がある。
2つの「ジプシーの歌」を繋ぐキーワードがもう一つある。ウィーンの宮廷歌手グスタフ・ワルターの存在だ。ドヴォルザークの「ジプシーの歌」は彼に捧げられている。ドヴォルザーク同様にボヘミア出身だ。
ブラームスの「ジプシーの歌」は四重唱ではあるが、テノールに充分な光が当てられていている。「恋唄」op71-5同様グスタフ・ワルターを意識した作品だ。
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