一瞬のきらめき
ブラームスに限らず、特定のダイナミクスを維持したい場合「sempre」を用いることがある。「sempre p」「f sempre」の類である。さらにブラームスは放置しておくと維持が困難な場面にも「sempre」を配置することがある。ブラームスのダイナミクス語最多登場は「p」だが、「sempre」との共存に限れば「pp」にその座を譲る。
さてさて「ブラームスの辞書」では、ブラームスが用いた「mp」に特別の位置付けを与えている。出現時期の極端な分布に加え、出現場所が「おいしい」ことがその根拠だ。
ここだけの話、「mp」は「sempre」との関係でも特異な傾向を示す。「mp」はただの一度も「sempre」に修飾されないのだ。「sempre mp」「mp sempre」が存在しないということに他ならない。ブラームスにとって「mp」は延々と維持継続する対象ではないということだ。同じ事が「f」側でも起きている。それが「poco f:」である。「poco f」もまた「sempre」と共存しない。「mp」と対をなす使われ方だ。
つまり一瞬のきらめきのためにある。
しづ心なく花の散るらむ。
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