続最愛の歌曲
昨年6月8日の記事「最愛の歌曲」で、ブラームス歌曲一番のお気に入りが「野のさびしさ」op86-2だと書いた。しからばドヴォルザーク歌曲で一番のお気に入りはというのが本日の話題だ。
「我が母の教えたまひし歌」が最も一般に知られた作品であることに異論はあるまい。もちろん私とて美しいと思う。しかし今私がドヴォルザーク歌曲でもっとも好きな作品は別にある。
「主は私の牧者」である。最後の歌曲集「聖書の歌」op99の第4曲だ。「聖書の歌」の中では第7曲「バビロンの川のほとりに」を最高傑作に推す声が多い。実際に素晴らしい曲だが、私は賛成しかねる。
Andanteと記された冒頭、「quasi recit.」の指定が歌のパートに鎮座する。ピアノが「H」音をポツリと鳴らす。何とこれがイントロだ。アカペラ作品で歌い手に最初の音を示すためにピアノが鳴らされることがある。まさにそのままのピアノ単音のイントロだ。フェルマータで途切れ途切れに歌い出される静溢なモノローグ。動きの少ないピアノ伴奏が、かえって凄みを感じさせる。「音楽の起伏最小にして表現の幅最大」を現実に示してくれている。
そしてそして、歌い出しの部分にとっておき感溢れる「mp」が、ひっそりと置かれている。1894年の作品だから、「mp1880年説」に矛盾しない。
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