虚数
4月16日と17日に相次いで「指名手配」と「追加手配」をアップした。ブラームスに頻発する「poco f」「sotto voce」「mezza voce」がドヴォルザークには見当たらないという趣旨だ。さすがは公開捜査だ。さっそく「mezza voce」が発見された。この調子で全部見つかると嬉しい。情報提供に感謝する次第である。
さて数学の話だ。中学に入るとすぐ数直線を習う。整数、自然数、負の数、有理数などの理解を深めるためだ。循環小数、無理数など厄介な概念ではあっても、数直線上での大体の位置はイメージ出来る。この数直線の概念では、どうにもならなくなるのが虚数だ。一般に「i」をもって表される。二乗して「-1」になる数だ。数直線上での位置をイメージ出来ない。
数直線をダイナミクス直線に置き替える。一本の直線上に目盛りを付け、左から順に「ppp」「pp」「p」「mp」「mf」「f」「ff」「fff」と書き記せばたちまち出来上がりだ。作曲家によっては「ffff」「pppp」なども加えなければなるまい。目盛りは必ずしも等間隔とは限らない。音楽家たるもの皆、独自の基準を持っていると申しても良いだろう。過去の西洋音楽の伝統に照らして、大まかな合意はあるものと推定出来るが、厳密な話をすれば作曲家毎、作品毎、演奏家毎に全部違うくらいの覚悟は要ると思われる。
ドヴォルザークに「poco f」が見当たらない現象に接して、私が思い出したのが「虚数」だ。ドヴォルザークは自らのダイナミクス直線上にそれをイメージ出来ないということなのだと思う。ト短調ピアノ四重奏の管弦楽版を見る限り、おそらくシェーンベルクもイメージ出来ていない。
ブラームスにはイメージ出来ていることは確実だ。だからこそ私ごときがブログや著書で大騒ぎする意味がある。
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