Sostenuto
ブラームスにあってはメジャーな用語だ。「ゆっくりと」と解されるが、注意も要る。「in tempo」や「a tempo」のようなテンポリセッターを伴わないケースも少なくない。テンポよりも表情が勝ったニュアンスなのだという気もする。その意味では「animato」の反対概念だ。
何よりも象徴的なのは、その分布だ。ピアノパートにしか現れない。必ずしもピアノ独奏曲とは限らず、室内楽や歌曲のピアノパートにも進出するが、ピアノ以外のパートには頑として出現しない。「ティークのマゲローネのロマンス」第4曲の56小節目の声のパートに現われるのがおそらく唯一の例外だ。
さてさて、このところ恐る恐る深追いを始めたドヴォルザークだが、彼のピアノ独奏曲には「Sostenuto」は一切現れない。ブラームスではピアノパートばかり約250箇所で用いられているのに、いったいどうしたことだろう。
ダイナミクス用語「poco f」「sotto voce」がドヴォルザークに現れないことは既に予測しておいた。本日はテンポ関連用語。ピアノ曲の比較において最大の見所と申し上げていい。
コメント