間接照明
光源からの光が直接目に入らない照明とでも申して良いのだろうか。月夜の雪景色が仄かに明るく感じるのも間接照明の一種かもしれない。
現実的には照明器具からの光を天井や壁面に反射させて得られる照明のことを指す。かけたエネルギーに対する得られる照度は低くなるからエネルギー効率は落ちる反面、ソフトな感じが得られる。これに対する言葉が直接照明だ。照明器具からの光が直接目に入る。エネルギー効率は良いがギラギラとまぶしく感じることもある。
ブラームスのことを調べようと思った場合、ブラームス関連の書物をあたる。当たり前の話だ。これはいわば直接照明だ。手っ取り早い。ところが、ブラームス関連書物のうち伝記と呼ばれる一群には注意も要る。主人公の悪い面が実態通りに書いていないことがあるからだ。伝記が書かれるような偉人でさえ、長短両面があるに決まっているが、短の部分が故意か偶然か記述がぬるいことが多い。長の部分があまりに大きいために、偉人扱いにはなっているものの、実は短も相当なものだったというケースもあろう。伝記とはそういうものだ。
これに対する奥の手がある。いわば間接照明だ。他者について書かれた書物の中のブラームスの記述を調べるのだ。手っ取り早さは数段落ちるが、ブラームスが必要以上に持ち上げられている可能性は低い。目的の人物との関係浅からぬ人物、あるいは敵対した人物の伝記は有力なツールとなり得る。
ブログ「ブラームスの辞書」の中では、クララ、バッハ、ドヴォルザークを光源に据えた間接照明によってブラームスを浮かび上がらせたいと思っているところだ。
間接照明の光源が多いほど、客観性が増すと思う。
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