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2010年5月26日 (水)

公平であること

ブラームスの伝記観を端的に示した言葉「公平であることは大切だが、冷淡であってはならない」は、思うだに含蓄がある。執筆者心得として金言だと思う。同時に難しいとも感じる。

伝記の執筆依頼が来るという時点で既にその作曲家研究の第一人者という位置付けで、一目置かれていることは間違いない。学問的な泰斗であることはもちろんだが、その作曲家を好きである可能性がきわめて高いと思われる。「好きであること」は基本的には良いことだが、「公平であること」とのバランスが難しいと感じる。

音楽之友社刊行の「大作曲家◎人と作品ドヴォルザーク」はドヴォルザーク没後100年の節目に刊行された好著だ。お手頃な価格の中にデータ満載で重宝する。筆者様のドヴォルザークラブが、けして大げさになることなく伝わって来る。

一方でドヴォルザークラブが高じてジムロックの描写がきついとも感じる。全体には穏和で控えめな記述なのだが、どうもジムロックに対する記述は手厳しい。

  • 交響曲第5番とその他をジムロックに売りつけた。
  • 8つのユーモレクで4000マルクをジムロックから搾り取った。

元々作品の出版にあたってジムロックとさんざん揉めた話が、あちこちで仄めかされているが、上記は極めつけだ。淡々とした事実の記述というニュアンスを超えている。ドヴォルザークラブだけはひしひしと伝わるが、筆者様はジムロックがブラームス作品に支払った金額を知っていたのか大変興味深い。

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