mpmf
先般買い求めた「糸杉」弦楽四重奏版スコアで見つけた最大のサプライズだ。同曲集全12曲の2番目はさめざめとした感じが大のお気に入りなのだが、その冒頭に鎮座するれっきとしたダイナミクス用語だ。
「fp」は「強くただちに弱く」と解されて違和感がない。ブラームスの作品にもヤマほど出てくる。「mpmf」を同じノリで解釈すれば「やや弱くただちにやや強く」となる。微妙な用語をこね回すことにかけては人後に落ちないブラームスではあるが、「mpmf」は一度も使っていない。
そもそもブラームスは動体視力に配慮してか、ダイナミクス用語は3桁を上限にしている。つまり「fff」は存在するが「ffff」は存在しない。「fpp」や「fmp」も現れるが、必ず3桁に収まる。
この作品さめざめとした第一ヴァイオリンのソロが魅力だが、それに先立つ2小節前からヴィオラと第二ヴァイオリンが決然と3連符で刻む。ヘ短調を断固確保するための確信深い刻みだ。問題の「mpmf」はその刻みの冒頭に置かれている。CDを聴く限りではこの場所が「mpmf」になっているとはとても想像が出来なかった。
演奏者に考えることを強制する凄みがある。これほどの難題はブラームスにも滅多に現れない。
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