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2010年6月 6日 (日)

さすがチェコ

CDショップを徘徊する際、立ち寄る場所がこのところ増えた。ドヴォルザークの売り場だ。今回の発見もその成果である。

「Dvorak Miniatures」というタイトルのCDだ。PANOCHAカルテットのメンバーによるドヴォルザークの小品だ。弦楽四重奏またはそれに準じた編成による室内楽が集められている。最近ではワルツや歌曲集「糸杉」の弦楽四重奏編曲には、驚かないだけの準備が出来ているが、さらに上を行く発見があった。

6月2日の記事「ハルモニウム」で話題にした「2つのヴァイオリン、チェロとハルモニウムのためのマリチコスチ」op47が収録されていた。全部聴いても30分かからない小品だ。

いやはや可憐である。弦楽四重奏は古典派保守本流だが、その外にあって、かくも可憐な室内楽を連発して見せるとは、さすがにドヴォルザークだ。ハルモニウムの音色は弦楽器によく溶ける。弦楽四重奏からヴィオラを抜いてハルモニウムを入れた編成だが、全く違和感がない。困るのはあまりに溶け込みすぎてハルモニウムの入りが聴き取りにくいことだ。ピアノでは絶対に考えられない。ピアノ入りの室内楽で、ピアノの入りが聴き取れないなどということはあり得ない。気が付いたらハルモニウムが和音を入れていたという状況がちょくちょく起きる。ハルモニウムが鳴りやむ瞬間にそれに気付くという面白い効果がある。

一方ハルモニウムが旋律にありつく頻度は、通常の室内楽でヴィオラが旋律にありつく頻度より低い感じだ。発音後に音の減衰が無いという特徴を生かして、内声に和音を敷き詰めるという役割がピタリとはまる。ヴィオラよりもその点では優秀だ。

  • 第1楽章 Allegretto scherzando
  • 第2楽章 Tempo di menuetto,grazioso
  • 第3楽章  Allegretto scherzando
  • 第4楽章 Canon, Andante con moto
  • 第5楽章  Poco Allegro

一番はじめに気付くことはソナタ形式の楽章が無いと言うことだ。事実上全て舞曲だと感じる。第1楽章冒頭の哀愁溢れる旋律は、フォークダンスになりそうで非常に印象深い。第3楽章は似た旋律で立ち上がる他、第5楽章の中間部にもさらにその変形が出現する。第4楽章は「カノン」とタイトリングされている。第1ヴァイオリンとチェロがカノンを形成し、ハルモニウムがそれにからみつく。しかし、声部のからみが複雑で、楽譜を見ないと詳しいことは判らない。何と言ってもお気に入りは第5楽章だ。キビキビと動き回るチェロが特筆物である。

2100円という価格も手ごろなお宝CDは、メイド・イン・チェコだ。さすがにドヴォルザークの故郷だけのことはある。プラハあたりのCDショップに行くと、この手のお宝がとぐろをまいているのだと思う。羨ましい。

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