テ・デウム
カトリック系の賛美歌の一つで「Te deum」と綴られる。本質的には感謝の歌だが、時代が下るとともに華やかな伴奏を伴って祝典的な場面でも演奏されるようになる。ブルックナーやドヴォルザークの作品が有名だ。
ブラームスは「テ・デウム」に縁が無いと思いきや、意外な接点があった。1872年11月10日楽友協会の芸術監督就任後初めての演奏会で、ヘンデルの「ゲッティンゲン・テ・デウム」を取り上げた。英国の対仏戦勝利を祝して作曲された作品だ。ドイツ帝国成立のキッカケとなった普仏戦争勝利後初めてのシーズンの幕開けを飾るという意図があったかもしれない。
一方1872年6月5日、つまり今から138年前の今日初演された「勝利の歌」op55は普仏戦争の勝利を祝した作品だ。ドイツ帝国皇帝ウイルヘルム1世に献呈されている。なんとこの作品は、友人への手紙の中で「テ・デウム」を称されているのだ。対仏戦勝利というキッカケといい、テ・デウムというタイトルといいヘンデルの「ゲッティンゲン・テ・デウム」が念頭にあったことは確実だ。
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