たった一度のソロ
大学入学後ヴィオラを始めて、3年の冬にはパートチーフになった。やめずに続けていれば、初心者でもこういうことが起きる。おまけに大学4年の時には団長になった。団長は、楽器のテクとは関係がないが、パートチーフは痛い。演奏会ではトップの位置で弾くのだ。私はテクでトップの座を手繰り寄せた訳ではないから、ソロでも出て来ようものなら、そりゃあもう緊張した。パートソロならともかく、トップ奏者の独奏ともなると半端でなくやばい。
4年夏の演奏会で、ソロが出てきた。ドヴォルザークの新世界交響曲だ。第2楽章の110小節目である。コンサートマスターと、チェロのトップと私の3人で、「遠き山に日は落ちて」を弾く感じだ。ヴィオラ的にはD♭音の伸ばしだから、緊張はさほどでもないが、ヴィブラートのまずさが露呈するという副作用も付いて回った。弦楽5部の1プルト目によるアンサンブルでフラットゴロゴロの旋律を弾かされる105小節目の方が5倍はやばいことも、ソロの緊張感を弱めていたと思う。
1981年6月24日の話である。もっと味わってやればよかったと後悔するばかりである。
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