Lento
アメリカ四重奏曲の中で、とりわけ気に入っているのは第2楽章だ。ニ短調8分の6拍子で歌われるエレジー。ドヴォルザーク緩徐楽章の最高峰だと思っている。
その楽章冒頭の発想記号こそが、本日のお題「Lento」だ。ちょっとしたサプライズを形成する。ソナタの緩徐楽章が「Lento」になっているというのは珍しい。少なくともブラームスには例が無い。ベートーヴェンには一箇所、弦楽四重奏曲第16番ヘ長調の第3楽章「Lento assai, cantabile e tranquillo」だけだっと思う。
試験に出たら「ゆっくりと」と書けば罰点をくらうことはないが、「Adagio」との違いを50文字以内で述べよとでも問われたら、難易度が半端でなく高まる。ブラームスはソナタの緩徐楽章においては「Lento」を用いていない。おそらく区別していたと感じる。
ドヴォルザークは無視し得ぬ数の「Lento」を使っているが、ソナタの緩徐楽章では、おそらくこのアメリカ四重奏と最後の弦楽四重奏曲第14番変イ長調のみだ。
何だか味わいが深い。
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