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2010年7月10日 (土)

楽章の切れ目

ソナタと言われる作品群は、小楽曲の集合という形態を採る。ソナタを構成するそれら小楽曲が楽章と呼び慣わされている。楽章の終わりには終止線が置かれているのが普通だ。次の楽章までの間、演奏者たちの過ごし方に作曲家は関与していない。

しかし、ベートーヴェンはこの前提に疑問を提起する。有名なのは交響曲第5番で、第3楽章スケルツォからフィナーレの間に切れ目が存在しない。続く田園交響曲でも同様のトライを行った。極めつけは弦楽四重奏曲第14番だ。全曲切れ目がない。

ベートーヴェンに続く世代、つまりロマン派の初期の人たちはこの手法をこぞって取り入れる。楽章間をつなげる手際までも鑑賞の対象とみなされる。楽章間の咳払いがうるさいからなどという無惨な理由ではないと思うが、19世紀初頭に生まれたロマン派の旗手たちの常套手段となって行く。ナンバーオペラに背を向けたワーグナーのロジックにも一脈通じるものがあろう。

ところが、ブラームスはこの手法に背を向ける。ごくごく1部の例外を除いて楽章の継ぎ目をブリッジで繋ぐことを一切していない。演奏者が楽章の間合いを意図的に短くすることはあるが、マストではないのだ。

この点ドヴォルザークとブラームスの考えが一致していると思われる。遺された作品の構造からそう推定出来る。

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