さざなみはソプラノ
事前に「お叱り覚悟」と宣言して、荒唐無稽な仮説をひけらかす癖が止まらない。昨日がそうだった。
ブラームスのチェロソナタ第2番(1887年)の冒頭と、弦楽五重奏曲第2番(1890年)の冒頭だ。この両者は以下の点において共通する。
- テノールの音域のチェロがフォルテで旋律を提示する。
- ソプラノの音域にて16分音符のさざなみが伴奏する。
この枠組みが1892年作のドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番ヘ長調「アメリカ」の冒頭にも現われるということを指摘し、偶然にしてはおいしいと私見を提示したつもりだ。唯一アメリカ四重奏曲の冒頭では旋律がヴィオラに差し替えられているが、テノールの音域であることは動かない。
さてドヴォルザークの名を世界に知らしめたスラブ舞曲の第2集の冒頭第9番の中間部には、アメリカ四重奏曲の冒頭旋律が短調で出現する。1度目の提示では明確ではないが、2度目に提示される時は「テノール音域の旋律&ソプラノ音域の16分音符の伴奏」という枠組みになっている。1886年の作品だ。
さらに6年遡る。ピアノ独奏曲「エクローグ第4番」op56-4にも全く同じ旋律が短調で出現する。驚いたことに旋律はピアノの左手、16分音符の伴奏が右手だ。つまり上記1,2の枠組みになっている。
アメリカ四重奏曲冒頭の名旋律は、12年前の初出の時から「テノール音域の旋律&ソプラノ音域の16分音符の伴奏」という枠組みだった。
恐ろしくなってきた。真似したのはブラームスかもしれない。
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