お盆のファンタジー4
昨年のお盆は、ブラームスとヨアヒムのコンビにすっかりかき回されてしまい、徹夜明けでバタバタと帰っていった。おかげで「来年もおいでください」と言いそびれた。だから心配していたのだが、ブラームスは何食わぬ顔でやってきた。迎え火を焚くのを待ちかねたように入ってきて、連れを呼んでもいいかと尋ねて来た。「もちろんだ」と答えると玄関の外にいた紳士を招きいれた。
見事なヒゲ、人なつっこいつぶらな瞳。ドヴォルザークだ。
昨年の9月8日からカテゴリー「303 ドヴォルザーク」で盛り上がっているのを知っているのかもしれない。大歓迎だ。娘らには「遠き山に陽は落ちて」のおじさんだと紹介した。「おぉぉ」ってな反応だ。ドヴォルザークは1男2女を早くに亡くしている。我が家の子供たちも偶然1男2女だ。子供の話で盛り上がりそうな感じである。きっと子煩悩なのだろう。
程なく私の巨大ヴィオラを興味深げに取りだした。ブラームスが「こいつは作曲よりヴィオラが本職だ」とつっこみを入れる。「何たってスメタナの名高いカルテットの非公開初演でヴィオラを弾いたくらいだからな」と付け加えた。私が「何故ヴィオラソナタを書かなかったのだろう」と言うとブラームスは「オレが書いていないから遠慮したんだろう」とさらに突っ込む。
ブラームスのソナタの楽譜を恐る恐る差し出すと、ドヴォルザークの目が輝いた。これから弾いてくれるという。変ホ長調にしようというドヴォルザークの提案だ。ピアノはもちろんブラームスだ。暗譜しているらしい。
こんなことならドヴォルザークのテルツェットを娘らと練習しておくんだったと思ったが後の祭りだ。私が困っていると次女がトロンボーンを持って入ってきた。お礼の演奏は、昔楽譜を書いてやった「アヴェマリア」を吹くという。ブラームスは、キョトンとしている。昨年はヨアヒムと盛り上がり過ぎて、ブラバンでトロンボーンを吹いていることを言いそびれていたのだ。訳を話すとブラームスが伴奏を買って出てくれた。これも当然暗譜しているハズだ。
そうだ。長男に言ってプラレールセットを準備させよう。鉄道好きなドヴォルザークのことだ、きっと喜んでくれる。
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