ヘルダー
ヨハン・ゴットフリート・フォン・ヘルダー(1744~1803)のこと。ドイツの神学者、文学者、思想家である。昨日の記事「諸国民の声」の主人公だ。ブラームスが彼の著作を愛読していた形跡があることが話題の中心だった。
ところが、この人ドヴォルザークの伝記にも現れる。
昨今の伝記は単に主人公の人生をトレースするだけにとどまらず、歴史的な位置付けをも浮き彫りにする意図が込められていることが多い。チェコの音楽史の中のドヴォルザークの位置付けを明らかにしようというものだ。
ドヴォルザーク出現以前のチェコ音楽の実態を把握しようと試みる時、本日のヘルダーが登場するのだ。18世紀後半のことだ。
民族のアイデンティティを確認強化する上で、母国語はもちろん民俗や文化がとても重要であるという思想を唱えた。長くオーストリアの支配下にあったチェコでも歓迎され、音楽においては民謡の復興を促すことになったとある。なるほどブラームスが愛した「諸国民の声」は、民謡の集大成だった。こうした民謡重視の機運がドヴォルザーク出現以前に既に盛り上がっていた。
ドヴォルザークの出世作「モラヴィア二重唱」のテキストは、まさにこうした動きの結果だったという訳だ。
ブラームスとドヴォルザークには共通して民謡への暖かな視点を感じる。
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