嘆きの年
ワインの品質が原料ブドウの出来に大きく依存していることは既に述べた。ブドウの品質が高かった年のワインはヴィンテージ物として珍重される。ワイン愛好家の楽しみである。
第二次世界大戦におけるドイツの人的損害は兵員の死者行方不明者500万人、負傷者400万人、民間人の死者50万人といわれている。戦後ドイツが領有権を失った地域からの帰還の途中で300万人が亡くなったという。日本の数字と比べるとその大きさがわかる。日本は兵員の死者120万人、負傷者460万人、民間の死者70万人だ。
兵員の多くは働き盛りの男性だ。このことがワインの生産にも深刻な打撃をもたらした。終戦の年1945年は原料ブドウの品質という点において、未曾有の当たり年だったという。ちゃんとワインを仕込んでいればヴィンテージ物のオンパレードとなっていたハズだ。ところがこの年、ワインを仕込もうにも働き手が足らず、仕込が出来なかったというのだ。機械化されていない場合、1ヘクタールのブドウ園での収穫には1日20人の摘み手が要るらしい。畑に勾配がついているとさらに人手が要るという。目の前に良質の原料ブドウがたわわに実っていながらワインに出来ないというつらい状況が生まれたということだ。
この年1945年をワインの愛好家は「嘆きの年」と呼んでいる。
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