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2010年10月 1日 (金)

危機感を煽る

およそ出版物の内容について申すなら、「安心ですよ」と言うよりは「危ないですよ」と言った方が大きな売り上げをもたらす。オフィシャルな統計があるとも思えないが、経験的にそう感じる。

巧妙なマーケティングだと思う。人間の心理とはそういうものだ。危険情報の方が、自腹を切って買う決断をすることに繋がりやすい。おそらく著者、出版社は皆わかっているのだと思うが、表だって議論されない。

マスコミも含めて出版は商売だから、刊行物が売れることが肝要だ。だから一部では中身の信頼度はさておきとりあえず危機感を煽った方が手っ取り早いというポリシーも現われる。「安全保障」「環境問題」「食糧」「健康」など、店頭の書物を見るにつけそう感じる。さらに言うなら肝心なのは中身よりもむしろタイトルだとも感じる。あるいは電車の吊り広告に踊らせるキャッチコピー。

困った。

我が「ブラームスの辞書」は何ら危機感を煽っていない。著者である私の頭を「大丈夫かコイツ」と心配させる効果はあるかもしれないが、危機感とまでは言えまい。読者の側の差し迫った危機感を煽ることがコツなのだが、それが出来ていない。どうでもいい蘊蓄にとどまっている。

「ブラームスの音楽は身体に悪いから、聴き過ぎに注意しましょう」とやった方がマーケティング的には正解なのだと思う。

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