カール大帝
カール大帝(742-814)といえばご存知フランク王国の王だ。彼の治世においてフランク王国はもっとも勢力を伸ばした。現在の中欧諸国の基礎を築いたと評価される英雄である。実際カール大帝がしたのはラインガウを含むあたり一帯の土地を国有化つまり大帝にとっては私有化し、改めて司教や修道院に分配した。
在位期間のほとんどを征服戦にあてたカール大帝だが、言い伝えによるとガリア今のフランスにブドウの栽培を普及させたのは彼の功績だというが、考古学的には、もっと遡る証拠も多々発見されていて鵜呑みは危険だ。現在のドイツ領内でも彼にまつわる伝説が数多く残っている。ワインの大産地で名高いラインガウの対岸、ライン川をはさんで向かい合う位置にインゲルハイム(Ingelheim)という街がある。ここにカール大帝の王宮があった。
春浅いある日カール大帝は、ライン川をはさんだ対岸、雪が真っ先に消える丘を指して「あそこにブドウを植えよ」と言った。真っ先に雪が消えるということは、あたりで一番の陽だまりがそこにあるということだ。かくして人々はそこにブドウを植えいつしかワインの名産地になったと伝えられている。その丘こそが先日来さんざん話題にしているヨハニスベルクである。シュロス・ヨハニスベルク(ヨハニスベルクの館)の創立は1050年だが、ブドウの栽培はそれよりもさらに遡るということが推定できる。
北緯50度、ブドウ栽培の北限にあって日当たりこそが好立地の条件だ。この説話はその点を巧みに押えている。山肌に残雪が織り成す形で種まき時期を悟った「雪形」に通ずるものがある。
地図を開く。ヨハニスベルクの対岸に本当にインゲルハイムがある。
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