最後の手段
万策尽きる一歩手前の手段のこと。医者に匙を投げられた殿様の最後の手段がワインだった話は既にしておいた。本日も最後の手段がワインだった話だ。
ドイツ30年戦争の最中、ローテンブルク市はプロテスタント側に付いたため、バイエルン公国から攻撃を受けた。ティリー将軍率いるバイエルン軍の猛攻によく耐えたが、1631年10月に降伏した。ティリー将軍の戦後処理は市全域の破壊という過酷なもので、嘆願はことごとく退けられた。ここで登場するのが、フランケンの特上ワインだ。10月というタイミングからして出来たてだった可能性が高い。これをティリー将軍に献上したのだ。ワイン好きのティリー将軍は条件を示した。
「献上されたものと同じワイン3リットルを一息で飲み干せる市民が現れたら、市域の破壊を思いとどまる」というものだった。
好物のワインを献上されて心を動かす将軍も将軍だが、「3リットルの一気飲み」という条件を受けて立つ者が現われるというのもドイツならではである。
この難問を受けて見事クリアしたのが、他ならぬローテンブルク市長ヌッシュだった。老市長はワイン3リットルの一気飲みに成功し、市を破壊から救った。同市の街並みは中世の面影を残しているという点ではドイツで1、2を争う。それが観光資源にもなっているから、万が一一気飲みに失敗して破壊されていたら、とんでもない損失だった。
市立博物館にはこのときの一気飲みに用いたジョッキが今も残っているという。
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