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2010年11月12日 (金)

ヘンデルヴァリエーション

ワインに関わる格言が新約聖書に登場する。

「誰も新しいワインを古い皮袋に詰めたりしない」

「新しいことを古い形式で縛ってはいけない」というほどの意味合いだ。この後イエス自身の言葉が「さもないと皮袋が避けて袋もワインも使えなくなる」と続く。

これがなかなか理に叶っている。新しいワインつまり若いワインは、まだ発酵が止まっていないということがある。発酵が止まっていないということは、引き続き炭酸ガスが発生中ということだ。袋の中に炭酸ガスが充満すると弾力性が失われた皮袋が避けてしまう。万人を納得させるに足る説得力がある。聖書はこの手のたとえ話がとても上手い。

さて本日のお題「ヘンデルヴァリエーション」は、「ヘンデルの主題による変奏曲」op24の通称だ。この作品について論ずる文章は高い確率でワーグナーの言葉を引用する。1864年ブラームス本人の演奏でこれを聴いたワーグナーは「古い方法でも心得ある者の手にかかると本当にいろいろなことが出来るものだ」と感想を漏らしたという。

この言葉の原文が知りたい。どうも先のワインの格言を踏まえた言い回しのような気がしている。ブラームスのヘンデルヴァリエーションは、格言「誰も新しいワインを古い皮袋に詰めたりしない」の例外を形成すると言いたかったのではあるまいか。ブラームスは聖書の言葉に反して「新しいワイン」を「古い皮袋」に詰めて成功していると言いたいのだ。

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コメント

<ハンスリック様

ありがとうございます。
今後とも「ブラームスの辞書」をよろしくお願いいたします。

今日は彼の誕生日だったのですね。全く知らなかったのですが、今日は朝目覚めた時から彼の音楽が頭の中をめぐっていました。偶然の一致とはいえ驚きです。このサイトですが、いつも楽しく拝読しております。やはり音楽を理解する上でも、歴史の知識は必要だなと感じております。

<ハンスリック様

いらっしゃいませ。
ブラームスの誕生日に昔の記事を掘り当てていただいたばかりか貴重な情報をありがとうございます。

上記ワーグナーのコメントですが、ネット上であるパンフレット(ドイツ語)が見つかりましたのでお知らせ致します。
http://www.gabrieleschinnerling.de/CDBooklet.pdf

それによれば、原文は以下の通りです。

Man sieht, was sich in den alten Formen noch leisten lässt, wenn einer kommt, der versteht, sie zu behandeln

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