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2010年11月11日 (木)

ミュスカデ

フランスはナント周辺。ロワール川が大西洋に注ぐあたり特産の白ワイン用ブドウ品種のこと。爽やかな甘口の白を生み出すという。その名声は18世紀中葉のドイツ・ライプチヒにも届いていた。

1732年とも35年とも言われる頃、バッハが作ったのが「コーヒーカンタータ」BWV211だ。コーヒー好きの娘が父親に駄々をコネる他愛の無い筋書き。ドイツ・ライプチヒのコーヒーへの熱狂を今に伝える。第4曲ロ短調8分の3拍子ソプラノのアリアは、娘がコーヒーへの思いを切々と訴える。「コーヒーはキス1000回より素晴らしい」と歌って始まる。フルートのオブリガートが美しいなどと思っていると次を聞き逃す。「ミュスカデワインよりマイルド」と続くのだ。

本日のお題「ミュスカデ」がバッハの「コーヒーカンタータ」に出てくるということだ。欧州に名の知れた甘口の白よりマイルドとは素晴らしい。これが当時のドイツを席捲したコーヒーブームなのだ。テキストの作者ピカンダーは、市民の側にあるコーヒー熱を知り尽くしていた。コーヒーの素晴らしさを示す比喩に用いる以上、万人にとって説得力がある物でなければならない。そうでなければ「ほらあのミュスカデの甘口の白よりマイルドなんですよ」とやる意味が無い。そして大事なことは、ミュスカデのワインがコーヒーを持ち上げるための小道具になっているということだ。

さて、あまりコーヒーなど飲まぬ我が家の長女が昨夜、3泊4日の修学旅行から無事帰宅した。母は道中の無事を祈ってささやかなコーヒー断ちであった。

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コメント

<田中文人様

恐れ入ります。苦し紛れに探し出したワインネタに暖かなコメントをいただき心強い限りです。

コーヒー・カンタータ大好きです。勉強になりました!

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