またしてもジムロック
昨日の記事「演奏権の独占」で、大規模管弦楽作品の出版が、翌シーズン前であることについて述べた。
さて「都市対抗初演ダービー」のリストを今一度ご覧いただきたい。各作品名の後ろに、出版社の名前も書いておいた。見ての通り全てジムロック社だ。ジムロック社は、これらの作品に対する原稿料を支払う。協奏曲で1曲あたり450万円、交響曲で750万円だ。ジムロックにとってはこの巨大な支払いがコストとなってのしかかるということだ。コストなら売上で回収せねばならない。
初演初シーズンを通して、各地で繰り広げられる演奏は、ブラームス本人かビューローが深く関与する。作曲者公認のオフィシャル模範演奏だ。これが欧州各地を巡回することで作品の評判は嫌でも上がる。ところが肝心の楽譜は、頑として出版されない。作品の評判が高ければ高いほど、「楽譜欲しいビーム」が各地から寄せられることになる。
半ば意図的に作られた楽譜待望状態の中、初シーズン終了の5月以降、おもむろに楽譜の刊行が始まる。次のシーズンが始まる前には遅くも出版を終えるという寸法だ。
- 作品を書くブラームス
- 作品を演奏するビューローやヨアヒム
- 作品を絶賛するハンスリック
- 作品を出版するジムロック
このような役割分担があり、各々が忠実に自らの役目をこなす。かくしてジムロックはブラームスの原稿料として支払ったコストを回収するというルーチンだ。ジムロック社の企業基盤の強化は、すなわちブラームスへの報酬支払い能力の強化でもあったに決まっている。
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