演奏権の独占
何やら難しそうなタイトルを掲げたが、大したことはない。
「都市対抗初演ダービー」のリストには、各曲のタイトルの横に楽譜が出版された年月を添えておいた。不思議なことに、7作品全てにおいて、楽譜の出版が初シーズンの終了後になっている。
これはどうしたことだろう。
一つは、新作の初演を含む最初のシーズンの演奏は全て手稿譜で行われたということだ。総譜もパート譜もである。
さらにそこから考えを進める。手稿譜ということは、ブラームスに近い人たち、つまり手稿譜を入手参照可能な人々の手によってのみ演奏が可能ということだ。録音技術も複写機も無かった時代だ。耳コピの名人がいたとしても、交響曲を一回聞いただけでスコアの複製を作成することはほぼ不可能だから、初シーズンは事実上ブラームスの仲間しか新作を演奏することが出来ないということに他ならない。
このことを「演奏権の独占」と表現した。音楽界がこぞって注目するブラームスの大規模管弦楽曲の新作だ。演奏されれば巨大な反響を巻き起こすことは見えている。初シーズンを通して楽譜が市販されていない状態を意図的に作り出しているということだ。嫌でも期待は膨らむ。
一方でブラームスにも実質的なメリットがある。初シーズンを通しての各地での演奏経験から作品に修正を加えることが出来る。出版してしまった後では思うに任せない。完全主義者ブラームスとしては、完璧な状態での出版が理想だろう。
もっと重要なこと。それはもっとも早い出版が5月で、もっとも遅い出版が10月だということだ。初シーズンの閉幕を待って出版し、遅くも次のシーズンの開幕までには出版が完了することを意味しているからだ。
初シーズンでの評判がどれほど高くても、演奏出来ずに指をくわえて待っている人々は、翌シーズンを前に争って楽譜を入手するということになる。
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