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2011年2月14日 (月)

版権

印刷物を出版する権利とでも言うのだろう。

一般に著者が持っているのではなく、出版社が持っているものだという。自費出版と一般の出版ではまた事情が違うと思われる。

本がベストセラーにでもなれば版権の持ち主たる出版社は、大もうけが出来るという。残念ながらベストセラーになるかどうかを原稿の段階で正確に予測することは難しい。だから作品の版権を獲得することは、出版者にとってはある種のギャンブル。ましてやその版権の獲得に大金を投じることにでもなれば尚更だ。

1888年4月。ブラームスの友人にして出版社のジムロックは、商売上の競争相手ブライトコップフ社からブラームスの初期作品の版権を買い取った。1888年といえば交響曲も既に全て世に出た後だ。つまり作曲家ブラームスの名声は高値安定の域にあった。ブラームスはジムロックからの手紙での報告が4月1日であったことを指して、「エイプリルフールならいいのに」と驚いて見せた。

ジムロックの払った金額が莫大だったのだ。ブラームスは作品の原稿と引き換えにブライトコップフ社から受け取った金額を記憶していたから、この取引でブライトコップフ社がどれほど儲けたかたちまち察したに違いない。ブラームスは「とてもおめでとうとはいえない」と手紙を結んでいる。

ドヴォルザークに対する姿勢とは雲泥の差だ。ジムロックの商売上の嗅覚は鋭い。ブラームスへの友情などという奇麗事ではないのだ。ブラームス作品の版権を有することの商売上の意義を、ブラームス以上にしっかりと認識していたに違いない。

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