組版の知識
ブラームスと出版人ジムロックの交友は有名である。大出版社ジムロックの社長に就任する前からの付き合いだ。ジムロックとの付き合いはブラームスに出版関連の知識をもたらしたと思われる。
交響曲第3番は、ブラームスの4つの交響曲の中では最も規模が小さい。このことはブラームス本人もよく認識していて、友人宛の手紙の中で「Symphonichen」としていることからも明らかだ。交響曲が縮小語尾によってモデファイされている。いわば「小交響曲」のニュアンスだ。
第3交響曲の規模の小ささを踏まえた言い回しがある。友人への手紙の中で「第3交響曲は短いから、組版も簡単に出来る」というくだりがある。このエピソードは、どんな書物でももっぱら交響曲第3番の規模が小さいという指摘のために引用される。私としては、そのこととは別に、ブラームスが出版の工程にも明るかった証拠だと思っている。
いくつもの出版社と刊行の交渉をするうちに、出版社側の事情にも精通していたと解したい。出版社から見たブラームスは、超一流の作曲家であったと同時に、タフな交渉相手でもあったと考える。
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