標準小売価格
今や死語か。メーカーが末端小売価格の形成に関与していた時代の遺物。代金を支払って所有権が移ってしまったら、所有者がいくらで売ろうと自由という論理に取って代わられた結果、「メーカー希望小売価格」という表現に差し替えられた模様。商品の外装にもこれが記載されるようになって久しい。
楽譜はどうだろう。スコアの一番最後には書かれている。奥書があればそこにも書かれているが、室内楽や管弦楽曲のパート譜には書かれていなかったような気がする。ましてやなんであれ、表紙には書かれていないのが普通だ。
マッコークルの作品目録はやはり芸が細かくて、ブラームス作品の初版印刷譜面の表紙に何が書かれていたか、細かく記載されている。
何と一部の楽譜を除き、販売価格が記載されている。時代により出版社により記載の無い楽譜もあるが、これがなかなかお宝な情報だ。今まではブラームスやドヴォルザークにジムロックが払った原稿料の話を繰り返してきたが、こちらは、その支払いをカバーすべく出版社が付与した「標準小売価格」に相当するからだ。
出来上がり10ページ程度の小品だと2マルク程度。大管弦楽のスコアになると20マルクを超えることもある。つまり1000円から1万円少々ということだ。なんだか現代の感覚に近い。ネットでダウンロードという手がない分出版社有利かもしれない。
印刷部数が判れば、利益率までも推定出来そうだが、重版が起きると計算は難しくなる。
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