献呈より凄い
4つの交響曲は誰にも献呈されていない。このうちの第3番には凄いエピソードが隠れている。
1890年1月8日、この日はハンス・フォン・ビューローの60歳の誕生日だ。ブラームスは盟友のビューローに第3交響曲の自筆スコアをプレゼントする。出版用の原稿としてジムロックに手渡したものとは別に書き下ろしたと推定されている。
出版社から刊行された印刷譜の表紙に「献呈の辞」が書かれるのも素晴らしいが、作曲者本人から手書きのスコアを贈られる栄誉は、ある意味で献呈を凌ぐと感じる。総延長数十小節の小品ではない。数百小節という規模、参加するパートの多さを考えると手書きスコアの価値は計り知れない。
もちろんビューローはその意味合いを十分に認識していた。その後、第3交響曲を指揮する機会を得たビューローは、ブラームスから貰った自筆スコアを演奏会当日に譜面台に持ち込む。そうしておいて実際には、スコアを閉じたまま暗譜で指揮するという挙に出た。超一流の指揮者ならではの感謝の表明であると感じる。
ジムロックに渡された出版用の原稿は行方不明になっいる一方で、ビューローに贈られたスコアは、ビューロー未亡人その他の手を経て現代に伝えられた。
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<narkejp様
カッコいい話ランキングがあれば上位に来そうです。
投稿: アルトのパパ | 2011年3月26日 (土) 07時14分
おお!ブラームスもかっこいいが、ビューローもかっこいいですね~。クララや子供たちは、こういうのを知っていたのだろうか、などと想像し、父性やダンディズムを理解する上で役立ったのかもしれない、と思います。
投稿: narkejp | 2011年3月26日 (土) 05時13分