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2011年3月13日 (日)

そもそも献呈とは

「特定の個人に作品を捧げること」とひとまず定義するが、議論の余地も残る。「あなたのために書きました」といって手稿譜をプレゼントすることは献呈には含まれないことがある。もらった側が、大切に保存した結果、後日出版されることもあるが、これは献呈ではない。

マッコークルは毎度の事ながら大変厳密だ。以下の通り4つに分けて記載されている。

  1. 印刷譜表紙に献呈の辞がある。
  2. ブラームスから自筆譜を贈られている。
  3. ブラームスから筆写譜を贈られている。
  4. ページの一部を贈られている。

ブラームスはこれらを上手に使い分けて交友関係の潤滑油にしていたと感じる。

重みという面では上記1番がもっとも価値がある。

印刷譜の表紙に献呈の辞が書かれるという不可避の条件があるからだ。ここに単なるプレゼントとの大きな違いがある。ヨアヒムに贈られた「FAEソナタ」や、クララに贈った「弦楽六重奏曲第1番第2楽章のピアノ版」は献呈ではなく単なるプレゼントだ。

献呈は、印刷譜の表紙に明記されることで、「贈り手」「受け手」以外に事実が公表されるという見逃せない側面が生じる。

単なるプレゼントは、贈り手と受け手の秘密にすることも出来るが、献呈の場合は、両者のひとかたならぬ関係を世の中に知らしめることになる。「私はこの人を大切に思っています」ということを世間に公開する機能が図らずも発生するということだ。

献呈相手を調べることはブラームスの交友史をたどることにほぼ等しい。

という訳でアラビアンナイト計画の次のなるお題は「献呈」だ。地震発生のため1日遅れの開幕。

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