印税
本の売上げに応じて、出版社から著作者に支払われる対価とでも申しておく。「税」という文字が使われているがいわゆる税金ではない。
印税額=販売部数×単価×定率
上記のような数式で求められるようだ。定率の部分は業界内の慣習に加えて力関係で決まるらしい。印税だけで飯が食って行けることは、著作者の夢である。我が「ブラームスの辞書」は、自費出版だから印税とは無縁である。
2009年10月26日の記事「生涯収入」でブラームスに印税が支払われていたかと問題提起した。
ブラームスの時代にも、作品の原稿料の支払いには一括払いと印税方式があったことは、ブラームスとジムロックの手紙から解るらしい。
- 一括払い 原稿を出版社に手渡しと同時に作曲者ブラームスに一括して払われる。作曲者にとっては最低保障を確保出来るが、バカ売れ大ブレークした場合にはその分を取り損なう。出版社にとっては作曲者への支払いを固定費として確定できる。売れなかったら損をかぶる。
- 印税方式 楽譜の売れ行きがパラレルに反映する。後々の手続きが煩雑かもしれない。
ブラームスはジムロックに「現行の方式(一括払い)だと得しているのか損しているのかが解らない」と書き送る。つまり少なくともジムロック社はブラームスとの取引において印税方式を採用していないということだ。楽譜が売れるという自覚があれば「印税方式」の方が作曲者にとっては経済的には有利だ。「本当は印税方式にしたいところだが、優柔不断だし、きままな独身の身分では、強行に主張しなかった。好ましいことではない」としている。1881年のことだ。
ジムロックからすれば「十分なことはさせてもらっている」という自覚もあっただろう。ドヴォルザークと比較する限りブラームスの特別扱いは明らかだ。結局印税方式は採用されずに終わった。
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