3拍子のマーチ
マーチは一般に「行進曲」と訳されて久しい。既にこの訳に違和感を感じる人は少ないと思われる。世の中一般には夥しい数の行進曲が存在する。4分の2拍子が主流である。中には8分の6拍子も混ざるが、概ね偶数拍子が守られている。恐らく人類の直立二足歩行に起因すると思われる。
イタリア語では「marcia」だ。ブラームスには以下の通りの実例がある。
- 埋葬歌op13 冒頭「Tempo di marcia funebre」
- シューマンの主題による変奏曲op23 第10変奏冒頭「Tempo di marcia moderato」
- 男声合唱のための5つの歌op41-3冒頭「Molto moderato,alla marcia」
上記1番は葬送行進曲。ハ短調の葬送行進曲なのでベートーヴェンの第三交響曲を思い出す。3例全て偶数拍子である。
ドイツ語では「Marsch」になる。ブラームスの実例は以下の通り。
- ドイツレクイエムop45第2曲冒頭「Langsam,marschmassig」
- 男声合唱のための5つの歌op41-4冒頭「im marsch tempo」
面白いのは上記2番とイタリア語側実例の3番だ。作品41の3番と4番という隣り合う出番でありながら、イタリア語とドイツ語に割れている。
今日の本題にたどりついた。上記1番ドイツレクイエムの第二曲は偶数拍子ではない。名高い葬送行進曲だが、4分の3拍子なのだ。重々しく引きずるような葬列にはかえって3拍子のほうが似つかわしいとも思われる。愛する人を埋葬の地に送り届ける葬列が、サクサクと流れては困るのだ。
古来からマーチという解釈があるピアノ四重奏曲第1番第3楽章の中間部もまた4分の3拍子になっている。
さらにだ。実は私が密かに葬送行進曲だと感じている曲がある。「4つの厳粛な歌」の第3曲だ。この曲拍子は2分の3拍子だ。偶数ではない。第5小節目の2分音符で数えて3拍目にピアノの左手が「mp」で四分音符2個を刻む。これが合図になって続く7小節の間、事実上4分の2拍子に聴こえる。この部分が実は個人的には曲中の白眉だと思っている。私には葬送行進曲に聴こえているのだ。
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